私のことはお気になさらず

みおな

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婚約者と婚約披露パーティー

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 あの後すぐに、私とグリフォン公爵閣下との婚約が決まった。

 私とケレス・タービン公爵令息との婚約は、白紙撤回。

 どうやら国王陛下がタービン公爵に言ったらしくて、公爵はあっさりと私との婚約をなかったことにした。

 何を言ったのかしら?

 まぁ、公爵夫人はカバヤン伯爵令嬢の方が良かったみたいだし、そもそもそりが合わない前公爵夫人の決めた婚約なんか納得いかなかったのでしょうけど。

 ケレス様だって、私より大切なカバヤン伯爵令嬢と婚約した方が嬉しいわよね。

「閣下。これからよろしくお願いします」

「婚約者になったのだから、名で呼べ、ティア」

「はっ、はい。ええ、と・・・ヴィル様?」

「ああ」

 まさか、速攻で名前呼びをお許しいただけるとは思わなかった。

 確かに婚約者にはなったけど、閣下・・・ヴィル様は筆頭公爵家のご当主様だし、それに十二歳も年上なのよ。

 お名前で呼んで、失礼じゃないかしら?

 婚約時代は閣下、結婚してからは旦那様とお呼びするものだと思ってたわ。

「一週間後に婚約披露のパーティーをする。今日の午後にデザイナーを呼んでいるから、これから公爵家に行くが問題ないか?」

「だ、大丈夫です」

 一週間後のパーティー用に、今からデザイナーを呼んでも間に合うわけがない。

 ということは、とりあえずの採寸と好みのデザインに合った既製品を準備してくれるということかしら?

 何にしても、婚約披露パーティーで自分で準備したドレスではなく、婚約者がプレゼントしてくれたドレスを着れるなんて嬉しいわ。

 ヴィル様は黒髪黒目だから、ドレスの色は黒かしら?

 リーデンス王国は、社交界で黒のドレスを着ても問題はない。

 他国では、祝いの場に着るものではないという国もあるけど、リーデンス王国に限っては自由だ。

 ただ、若い令嬢は華やかな色を好むし、婚約者の色を纏うから、黒いドレスは珍しい。

「では、行くか」

「はい」

「お姉様?お出かけになるの?」

 グリフォン公爵家の馬車に乗ろうとしていたら、王宮からリリアがちょうど戻って来た。

「リリア、閣下にご挨拶なさい」

「はい、お姉様。ごきげんよう、グリフォン公爵様」

「ああ」

 リリアは、ケレス様のことは毛嫌いしていたけど、ヴィル様のことは嫌いではないらしい。

 父親くらい年齢が離れているから、朗らかにとはいかないけど、ちゃんとカーテシーをした。

 どちらかと言うと、ヴィル様の方がそっけない感じね。

「婚約披露パーティーのドレスの準備に、グリフォン公爵家に行くのよ」

「私もお姉様とお揃いのドレスにしたいわ!」

「そういうわけにもいかないでしょ。貴女はエーリッヒ殿下のお色のドレスにしないと。殿下が寂しがるわよ」

 リリアの婚約者であるエーリッヒ王太子殿下は、とてもとてもとーってもリリアを溺愛されているもの。
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