私のことはお気になさらず

みおな

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公爵家家令と侯爵令嬢

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「ティア・ブルームです。よろしくお願いします」

「グリフォン公爵家の家令を致しております、カール・セブォンと申します」

「カールは俺の父親の代から仕えてくれている。分からないことは、カールに聞くといい」

「はい」

 私はグリフォン公爵家にて、公爵夫人としての教育を受けることになった。

 グリフォン公爵家は筆頭公爵家。
他の家とは女主人としての役割も違うだろう。

 カールは綺麗な白髪の、品の良いお爺さんという感じだった。

 ヴィル様はお忙しいようで、私をカールに会わせたあとは執務室にこもられてしまった。

 お忙しいのね。
あとで、お茶くらいはご一緒できるのかしら。

「それでは、ティア様こちらへ。侍女長やティア様付きの護衛を紹介しましょう」

「ええ、お願いします」

「私に丁寧な言葉は不要ですよ。ティア様は旦那様の婚約者。そしてこの家の女主人になられる方ですから」

「・・・ええ、分かったわ」

 私も自分の家の使用人に敬語を使ったりしないけど、筆頭公爵家の人だと思うと、つい。

 でも傲慢な態度は駄目だけど、使用人に謙った物言いをするのは女主人として正しくないものね。

 その後、侍女長や料理長、庭師の方など多くの使用人を紹介してもらった。

 そして、私専属の侍女兼護衛も。

「アデリアと申します、ティア様」

 アデリアは、焦茶色の髪と瞳をした、細身で大人な女性というイメージだった。

 私より二歳年上らしいけど、二年後にあの大人っぽさが私に備わるとは思えないわ。

「よろしくね、アデリア」

「はい。これから常におそばに仕えさせていただきます」

「え?ブルーム侯爵家にも付いてくるということ?」

「閣下のご指示でございます。閣下を脅かそうとする愚か者は、残念ながら存在いたします。婚約者になられたティア様に危険が及ぶことがないようにとのことでございます」

 この世界が、善意の塊だとは思っていない。

 実際には、ドロドロとした醜い足の引っ張り合いが多い世界だろう。

 私はまだ社交界には出ていないけれど、リリアなどは王太子殿下の婚約者として、家から一歩出たらその言動は注目されるから、ものすごく気を遣っていると思う。

 うちのお父様のように、裏表がない人なんて貴族の中では稀少なのよね。

 お母様は、そこに惹かれたのだとおっしゃってたけど。

 私は、カールから教わった公爵家での家政の流れを思い出しながら、窓の外へ視線を向けた。

 グリフォン公爵夫人の執務室となるお部屋。

 淡いグリーンとオレンジの、壁紙や絨毯。

 カールは、婚姻するまでに好みに変えてくれると言ったけど、お断りしたわ。

 このままで落ち着くもの。
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