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求めたいものは〜王太子ジュリアーノ視点〜
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クーデリア王国に百年ぶりに聖女が現れた。
黒曜石の髪と瞳の、とても可愛らしい少女。
彼女は、この世界ではなく異世界?というところから来たと言った。
まさかそんなことがあるとは思えないが、王都にある魔法研究所の魔法陣からいきなり現れたらしい。
それは百年前も同じだそうで、異世界から現れた少女は、聖女と認定された。
平民と同じ所作で、全くこの世界の知識を持っていない少女が聖女と呼ばれる理由は、その魔力量と使える魔法の質、そして聖女が現れた世代は災害もなく多くの富に恵まれると記されているからだ。
容姿だけで言うならば、僕の婚約者であるウェンディ・レンブラン公爵令嬢の方が優れているだろう。
公爵家侯爵家で僕の年齢に近い令嬢の中で、一番容姿が優れているのがウェンディだと今でも僕は思う。
ウェンディの愛らしさに惹かれた僕が、父上に望んで結んだ婚約だった。
まさかそのウェンディを邪魔だと思う日が来るなんて、幼い頃の僕は知りもしなかった。
ユエの愛らしさは、その笑顔にある。
元々容姿が優れている上に、貴族令嬢のように貼り付けた笑顔でなく、屈託なく笑う。
楽しい時は笑い、悲しい時は泣く。
貴族令嬢としては失格のソレに、僕はどうしようもなく惹かれた。
ユエは、身分とか家格など関係ない世界で生きて来たらしく、貴族令嬢としてのマナーは壊滅的だった。
ウェンディとの婚約は、ウェンディ本人に頼み込めば何とか解消できるだろう。
だけど、ユエの今の状態では王太子妃には出来ない。
一応、後見としてラミリス公爵家を付けたが、ユエには全くマナーが身についていなかった。
ユエと結ばれるには、ウェンディを側妃にするしかない。
僕の婚約者として長く、公爵令嬢である彼女なら、ユエの補佐として王太子妃としての公務が出来る。
だから、父上にお願いした。
だが、父上からは冷たい視線と厳しい叱責が返ってきた。
「百年前の聖女様は慎ましく、努力も怠らず、そして当時の王弟には婚約者がいなかった。だから、王弟妃として王族に迎え入れた。だが今回の聖女様は、全くと言って良いほどマナーが身についておらず、自由奔放過ぎる。そして何より、お前が望んだ婚約者がいるのだぞ?我が国では側妃は認められていない。たとえ相手が聖女様といえど特例は認められない。聖女様を大切に扱うことには文句はない。だが、レンブラン嬢を大切にしないのなら、王太子の席を失う可能性があることも忘れるな」
何故父上は、理解ってくれないんだ。
黒曜石の髪と瞳の、とても可愛らしい少女。
彼女は、この世界ではなく異世界?というところから来たと言った。
まさかそんなことがあるとは思えないが、王都にある魔法研究所の魔法陣からいきなり現れたらしい。
それは百年前も同じだそうで、異世界から現れた少女は、聖女と認定された。
平民と同じ所作で、全くこの世界の知識を持っていない少女が聖女と呼ばれる理由は、その魔力量と使える魔法の質、そして聖女が現れた世代は災害もなく多くの富に恵まれると記されているからだ。
容姿だけで言うならば、僕の婚約者であるウェンディ・レンブラン公爵令嬢の方が優れているだろう。
公爵家侯爵家で僕の年齢に近い令嬢の中で、一番容姿が優れているのがウェンディだと今でも僕は思う。
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まさかそのウェンディを邪魔だと思う日が来るなんて、幼い頃の僕は知りもしなかった。
ユエの愛らしさは、その笑顔にある。
元々容姿が優れている上に、貴族令嬢のように貼り付けた笑顔でなく、屈託なく笑う。
楽しい時は笑い、悲しい時は泣く。
貴族令嬢としては失格のソレに、僕はどうしようもなく惹かれた。
ユエは、身分とか家格など関係ない世界で生きて来たらしく、貴族令嬢としてのマナーは壊滅的だった。
ウェンディとの婚約は、ウェンディ本人に頼み込めば何とか解消できるだろう。
だけど、ユエの今の状態では王太子妃には出来ない。
一応、後見としてラミリス公爵家を付けたが、ユエには全くマナーが身についていなかった。
ユエと結ばれるには、ウェンディを側妃にするしかない。
僕の婚約者として長く、公爵令嬢である彼女なら、ユエの補佐として王太子妃としての公務が出来る。
だから、父上にお願いした。
だが、父上からは冷たい視線と厳しい叱責が返ってきた。
「百年前の聖女様は慎ましく、努力も怠らず、そして当時の王弟には婚約者がいなかった。だから、王弟妃として王族に迎え入れた。だが今回の聖女様は、全くと言って良いほどマナーが身についておらず、自由奔放過ぎる。そして何より、お前が望んだ婚約者がいるのだぞ?我が国では側妃は認められていない。たとえ相手が聖女様といえど特例は認められない。聖女様を大切に扱うことには文句はない。だが、レンブラン嬢を大切にしないのなら、王太子の席を失う可能性があることも忘れるな」
何故父上は、理解ってくれないんだ。
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