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両親と会うことにしました
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ウェンディ・レンブラン公爵令嬢。
つまり、本当の私を見舞うという名目で、ラミリス公爵夫妻・・・お父様お母様とお呼びすべきなのでしょうが、ここはおじ様おば様と呼ばせていただきますね、二人と共にレンブラン公爵邸を訪れました。
ウェンディ、つまり私の好みは分かっていますから、好きな白い花ばかりの花束を持って。
ウェンディは、白い花を好みました。
鈴蘭や百合、アネモネ、クレマチス・・・
ただお見舞いに全草に毒がある鈴蘭は向きませんから入れませんでしたが、ウェンディは好んでいました。
「突然の訪問、受け入れてくれて感謝する」
「いえ、こちらこそ・・・聖女様にお見舞いいただけるとは・・・」
分かりますわ、お父様。
婚約者である娘を差し置いて、殿下が寵愛しているのが聖女様。
お気持ちは複雑ですわよね。
自分が愛情を注がなかった娘が意識不明になって、どんなお気持ち?
娘の言う通り、王太子殿下との婚約を解消できるように動いていれば・・・と後悔してくださっていますか?
「ウェンディ様・・・」
私はベッドに横たわる本体の手を取りました。
魂がウェンディの時点で、聖女様としての力が使えるかは既に確かめてあります。
そして、魂がないウェンディに、癒しの力を使っても意味がないかもしれません。
でも、自分の体に戻れるかもしれません。
何も分からないままですが、確かめずにはいられませんでした。
暖かな光が私とウェンディの体を包み・・・そして静かに消えました。
ほんのわずかに、ウェンディの顔色は良くなったみたいですが、当然のことながら目を開けることはありませんでした。
「おお!顔色が良くなった!ありがとうございます、聖女様」
「いえ・・・力及ばす申し訳ありません」
お父様の礼を述べる声に、私は謝罪という形でしか応えることができませんでした。
一瞬でも、本体と繋がれば元に戻れるのでは、と考えた自分の浅慮さに呆れてしまいます。
私は・・・
元の体に戻りたい、いえ正確に言うならば聖女様の体から出たいのです。
この体は、王太子殿下に愛される人の体。
そんな中にいることは、私には苦痛で仕方ありません。
だから、こうして本体と触れ合えれば戻れるのではないかと希望を持っていたので す。
「聖女様・・・いえ、もしかしてウェンディお嬢様ではありませんか?」
そう声を上げたのは、私ウェンディの専属の侍女で幼い頃から常にそばにいたアガサでした。
「アガサ・・・」
「やはり!その困った時に耳たぶを触る癖、変わりませんわね」
さすが、幼い頃から私を見て来たアガサです。
つまり、本当の私を見舞うという名目で、ラミリス公爵夫妻・・・お父様お母様とお呼びすべきなのでしょうが、ここはおじ様おば様と呼ばせていただきますね、二人と共にレンブラン公爵邸を訪れました。
ウェンディ、つまり私の好みは分かっていますから、好きな白い花ばかりの花束を持って。
ウェンディは、白い花を好みました。
鈴蘭や百合、アネモネ、クレマチス・・・
ただお見舞いに全草に毒がある鈴蘭は向きませんから入れませんでしたが、ウェンディは好んでいました。
「突然の訪問、受け入れてくれて感謝する」
「いえ、こちらこそ・・・聖女様にお見舞いいただけるとは・・・」
分かりますわ、お父様。
婚約者である娘を差し置いて、殿下が寵愛しているのが聖女様。
お気持ちは複雑ですわよね。
自分が愛情を注がなかった娘が意識不明になって、どんなお気持ち?
娘の言う通り、王太子殿下との婚約を解消できるように動いていれば・・・と後悔してくださっていますか?
「ウェンディ様・・・」
私はベッドに横たわる本体の手を取りました。
魂がウェンディの時点で、聖女様としての力が使えるかは既に確かめてあります。
そして、魂がないウェンディに、癒しの力を使っても意味がないかもしれません。
でも、自分の体に戻れるかもしれません。
何も分からないままですが、確かめずにはいられませんでした。
暖かな光が私とウェンディの体を包み・・・そして静かに消えました。
ほんのわずかに、ウェンディの顔色は良くなったみたいですが、当然のことながら目を開けることはありませんでした。
「おお!顔色が良くなった!ありがとうございます、聖女様」
「いえ・・・力及ばす申し訳ありません」
お父様の礼を述べる声に、私は謝罪という形でしか応えることができませんでした。
一瞬でも、本体と繋がれば元に戻れるのでは、と考えた自分の浅慮さに呆れてしまいます。
私は・・・
元の体に戻りたい、いえ正確に言うならば聖女様の体から出たいのです。
この体は、王太子殿下に愛される人の体。
そんな中にいることは、私には苦痛で仕方ありません。
だから、こうして本体と触れ合えれば戻れるのではないかと希望を持っていたので す。
「聖女様・・・いえ、もしかしてウェンディお嬢様ではありませんか?」
そう声を上げたのは、私ウェンディの専属の侍女で幼い頃から常にそばにいたアガサでした。
「アガサ・・・」
「やはり!その困った時に耳たぶを触る癖、変わりませんわね」
さすが、幼い頃から私を見て来たアガサです。
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