24 / 88
困惑の王太子③〜王太子ジュリアーノ視点〜
しおりを挟む
きっとウェンディが、何か父上の耳に入れたに違いない。
そう心の中で決定付け、父上に反論しようとした僕に、母上のため息が聞こえた。
「どうしてこんな、愚か者になったのか。恋は人を愚かにさせるということでしょうか。ジュリアーノ、ウェンディは何も言っていませんよ」
「で、では、誰が・・・」
「誰がも何も、貴方は王族。側近がそばにおり、護衛も付いています。それに彼らの目がなくても、周囲には多くの貴族の目があったでしょう」
母上のおっしゃっていることは、理解できる。
だけど、いつも僕に従ってくれていた側近たちや護衛が父上に言いつけるなんて思いもしなかった。
「はぁ。貴方は本当に愚かね。彼らは確かに貴方の側近であり護衛であるけど、国王陛下の臣下なのよ。問題ありと判断したら、陛下に報告するのは当然でしょう」
「問題だ、なんて・・・」
「婚約者とろくに交流しなくて、ずっと聖女様と一緒なのですって?確かにわたくしもウェンディに、聖女様は大切なお方だから貴方と一緒にお支えしてと言ったわ。でも、不貞が疑われるほどべったり聖女様に侍れとは言っていないわよ」
「母上っ!僕とユエはそんな下世話な言葉で表すような関係ではなく・・・」
言いかけた僕の言葉を、母上はその手に持つ扇子のビシッという音で遮った。
「言い訳は無用。レンブラン公爵家から、婚約解消の申し出があったわ。いつ目覚めるかも分からない娘を婚約者のままにはできないからって。もう少し様子を見てからと言ったのだけど、断られてるしまったわ」
え?ウェンディとの婚約が解消された?
なら!
「言っておくが、聖女様とは婚約できないぞ。いつこの世界からいなくなるか分からない方を王太子妃にはできん。それに、あのようなマナーでは自国のパーティーにすら出せない。どうしても聖女様が良いというのなら、貴族令嬢としての最低限の知識を身につけさせろ。そうすれば、考えてやろう」
「本当ですか!」
「ああ。(小声)ただし、廃太子するがな」
ユエがマナーと最低限の知識を身につけてくれたら、僕はユエと婚約することができる。
そのことが僕の心に、明るい希望の光として差し込んだ。
ユエは今、何も覚えていない。
ならば新たな知識を教えたら、真っ白なカンバスに色々な色を付けられるように、ユエも貴族令嬢として問題なくなるのではないか。
そんな期待に胸が熱くなった。
次にラミリス公爵邸に行った時に、ユエに話してみよう。きっと喜んでくれるはずだ。
浮かれていた僕は、両親の冷たい視線には気付かなかった。
そう心の中で決定付け、父上に反論しようとした僕に、母上のため息が聞こえた。
「どうしてこんな、愚か者になったのか。恋は人を愚かにさせるということでしょうか。ジュリアーノ、ウェンディは何も言っていませんよ」
「で、では、誰が・・・」
「誰がも何も、貴方は王族。側近がそばにおり、護衛も付いています。それに彼らの目がなくても、周囲には多くの貴族の目があったでしょう」
母上のおっしゃっていることは、理解できる。
だけど、いつも僕に従ってくれていた側近たちや護衛が父上に言いつけるなんて思いもしなかった。
「はぁ。貴方は本当に愚かね。彼らは確かに貴方の側近であり護衛であるけど、国王陛下の臣下なのよ。問題ありと判断したら、陛下に報告するのは当然でしょう」
「問題だ、なんて・・・」
「婚約者とろくに交流しなくて、ずっと聖女様と一緒なのですって?確かにわたくしもウェンディに、聖女様は大切なお方だから貴方と一緒にお支えしてと言ったわ。でも、不貞が疑われるほどべったり聖女様に侍れとは言っていないわよ」
「母上っ!僕とユエはそんな下世話な言葉で表すような関係ではなく・・・」
言いかけた僕の言葉を、母上はその手に持つ扇子のビシッという音で遮った。
「言い訳は無用。レンブラン公爵家から、婚約解消の申し出があったわ。いつ目覚めるかも分からない娘を婚約者のままにはできないからって。もう少し様子を見てからと言ったのだけど、断られてるしまったわ」
え?ウェンディとの婚約が解消された?
なら!
「言っておくが、聖女様とは婚約できないぞ。いつこの世界からいなくなるか分からない方を王太子妃にはできん。それに、あのようなマナーでは自国のパーティーにすら出せない。どうしても聖女様が良いというのなら、貴族令嬢としての最低限の知識を身につけさせろ。そうすれば、考えてやろう」
「本当ですか!」
「ああ。(小声)ただし、廃太子するがな」
ユエがマナーと最低限の知識を身につけてくれたら、僕はユエと婚約することができる。
そのことが僕の心に、明るい希望の光として差し込んだ。
ユエは今、何も覚えていない。
ならば新たな知識を教えたら、真っ白なカンバスに色々な色を付けられるように、ユエも貴族令嬢として問題なくなるのではないか。
そんな期待に胸が熱くなった。
次にラミリス公爵邸に行った時に、ユエに話してみよう。きっと喜んでくれるはずだ。
浮かれていた僕は、両親の冷たい視線には気付かなかった。
231
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
聖女の妹、『灰色女』の私
ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。
『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。
一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる