入れ替わり転生〜生まれ変わったら、私を殺した婚約者の最愛になっていました〜

みおな

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困惑の王太子②〜王太子ジュリアーノ視点〜

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 ユエと会えなかった三日間は、黙って公務をした。

 そういえば、ウェンディとも会っていないことを思い出す。

 だが会いたいとも思わなかった。

 今の僕は、ユエしか求めていない。

 そして三日後、ラミリス公爵邸に向かう僕に、側近たちが何か言った気がするが、そんな声は僕の耳には入らなかった。

 とにかくユエに会わなければ。

 ラミリス公爵邸に着いた僕に、公爵はユエが高熱を出した後、自分のことさえ覚えていないこと、だから怯えさせないように離れた位置から話しかけ、ゆっくり時間をかけて接するようにと何度も念を押された。

 だがそんなことは、ユエの姿を見た途端、全て吹き飛んだ。

「誰・・・いやっ!」

 僕の手を弾き飛ばして、怯えるユエ。
ユエを抱きしめながら抗議する公爵夫人。

 公爵からも睨みつけられ、前もって話した意味がないと責められた。

 僕は、僕はただ・・・ユエに会えたのが嬉しくて。

 その後、公爵からはユエの記憶が戻るまでは会わせることも控えると言われた。

 ラミリス公爵夫妻がユエを大切にしてくれるのは嬉しいが、ユエは僕のだ!

 だが、その後に続いたユエの言葉に僕は答えられなかった。

「王太子殿下に婚約者の方はいらっしゃらないのですか?」

 普通の貴族なら、一番に気にするところ。
 だがユエのいた世界は、平民のように自由に恋愛する世界だったようで、ユエも全くウェンディのことを気にしていなかった。

 それなのに。

 誤魔化したことで、完全にユエに拒絶された。

 そして、行きと違い落胆した様子で王宮に戻った僕に知らされたのは、ウェンディが意識不明になって目覚めないということだった。

 どういうことなんだ?

 父である国王陛下からも、母である王妃殿下からも責められる。

 僕がウェンディに何かしたわけではないが・・・

 そういえば、いつからウェンディと会っていなかった?

 いつから会話をしていなかった?

 その後、ウェンディのレンブラン公爵邸に行くも、目覚めないウェンディに何をどうこうできるわけもなく、公爵夫妻や使用人たちの冷たい視線に、早々にレンブラン公爵邸を後にした。

 戻った僕は、両親からひどく叱られた。

 ラミリス公爵家からも抗議が来ていたらしく、父上が渋い表情をされていた。

「お前は・・・何をやっているんだ」

「僕は、聖女様をお支えしていただけです」

「確かに、この世界のことをご存知でない聖女様をお支えしろとは言った。だが、婚約者との交流もせず、聖女様にとは言っていないぞ!」

「そんな・・・侍るだなんて」

 そんな下世話な言葉で、ユエと僕の関係を語るなんて。

 そうか。ウェンディが余計なことを父上に言ったのだな!



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