あなたなんて大嫌い

みおな

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第7話

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「セラフィム子爵家から婚約解消の申し出があった。マグエル。お前有責だ」

 父親であるロートレック侯爵の言葉に、マグエルは目を丸くする。

「ち、父上?何をおっしゃっているのですか?子爵家風情が侯爵家である我が家に婚約解消の申し出?僕有責などと・・・」

「はぁぁぁ。お前はそこまで愚かだったのだな。リオルが出て行ったためにお前を嫡子とするべく結ぼうとした婚約の意味も、セラフィム子爵家の価値も理解していなかったとは」

 リオルの教育にばかり力を入れすぎて、マグエルを甘やかせたことをつくづく後悔する。

「お義父様?マグエルお義兄様を愚かだなんて、どうしてそんな酷いことをおっしゃるの?」

「ミリィ。お前は確かに体が丈夫ではない。だが、婚約者を蔑ろにしても付いていなければならないほどの病気ではないのだ」

「父上っ!!何故、そんな酷いことをミリィに言うのですかっ!」

 マグエルの反論に、父親である侯爵は頭を抱えてしゃがみ込みたい気持ちになった。侯爵としてそんな無様な真似はしたくない。したくないが、こんな愚息を後継にしなければならないのかと絶望感に襲われたのだ。

「ち、父上?」

「お前に継がせて没落させるわけにはいかん。リオルを探すか、見つからねば遠縁からでも養子にもらうしかあるまい」

「兄上を探す?な、何をおっしゃっているのですか?」

 セラフィム子爵家がもし力を貸してくれるなら見つけることはできるだろう。
 本人が戻ると言うかどうかは分からないが。

 もしかしたら、男爵家や子爵家という身分の低い令嬢と恋仲だったのかもしれないし、もしかしたら平民なのかもしれない。
 リオルが望むくらいなら、身分は低くとも優れた令嬢なのだろう。

 愚息に跡を継がせるくらいなら、平民の娘を貴族の養女にして、リオルの妻にした方がマシである。

 マグエルは、セラフィム子爵家の怒りを買っているのだ。
 このまま侯爵家に置いておくわけにはいかない。

「マグエル。2択だ。このまま大人しく家を出て、伯爵家のエリンと共に暮らすか、それとも平民になるか。どちらでも好きな方を選べ」

「は?エリン?平民?父上?」

「お前は廃籍だ。3日だけ待ってやる。それから、ミリィ。お前もこのまま病気だと言って部屋から出ないのであれば、教会の診療所に入れる。病弱ながらもキチンと侯爵家の令嬢として振る舞えるなら、縁談を探してやろう。お前も3日待つから良く考えて決めなさい」

 ロートレック侯爵の言葉に、マグエルもミリィも言葉を発することが出来ない。

 特にマグエルは、侯爵家の後継の座からいきなり廃籍などと言われ、呆然とするしかなかった。
 
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