拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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子爵令嬢と名乗る①

 一ヶ月ほどたった頃、シリルがマキシミリオン王国からやって来た。

「お疲れ様、シリル」

「うん。組織幹部たちの処理は終わったよ。あとは、魔法師たちが好きに使から、僕の手を離れた」

 使うって・・・
新たな魔道具の実験に使うと聞いていたから、私は何も言わずに微笑んだ。

 再生の魔道具もだけど、実際に使ってみないと、どんな効果があるのか影響があるのかが分からない。

 だから、犯罪者で処刑対象の人たちを使うのよね。

 メルキオール帝国は処刑制度がないから、マキシミリオン王国に犯罪者を送って、そういう形でお互い成り立ってるの。

「婚約の話をしに、伯父様たちも一緒に来るのかと思ったわ」

「うん。一緒に来ると言ってたんだけど、僕だけ先に来させてもらった」

「あら?どうして?」

「うん・・・僕はクロエが好きだよ。初めて会った時から好きだった。でも、クロエにとって僕は、兄上の弟でしかないよね?僕のことを好きではいてくれるけど、それは兄上や義姉上と同じ『好き』で、恋愛的な好きじゃない」

 私は、シリルの言葉を黙って聞いた。

 シリルの言っていることは正しい。

 シリルのことを好きな気持ちは、家族愛でしかない。

 元々、違う国で暮らしているから、たまにしか会わなかったし。

 それに・・・

 私はそういう、恋愛感情的なものが人よりも薄弱な気がする。

 本当の恋を知らないだけだと言われたら、それまでだけど。

「アルトナー王国で、子爵令嬢と名乗ってたって?」

 突然話が変わって、私はキョトンとした。

「え、ええ」

「どうして?」

「どうしてって・・・伯母様の指示よ。皇女の身分は明かさない方が良いからって。子爵令嬢にしたのは、相手が身分差別をしないかとか色々知りたかったみたいよ」

 私がアルトナー王国でルーベンス子爵令嬢を名乗っていたのは、伯母様・・・女王陛下の指示だ。

 もっと遡るなら、私が他国の、コンラッド公爵令息と婚約することになったのは、伯母様とお父様がお母様のことで揉めた結果だ。

 お母様のことを溺愛していた伯母様が、お母様をお父様にせめて姪の私をアルトナー王国に嫁がせろと言って・・・

 賭けをした挙げ句に、お父様が負けた。

 もちろん伯母様は調査を重ねて、あのコンラッド公爵令息を選んだんだけど。

 調査の段階では、彼は優秀だったそう。

 公爵夫妻にも問題はないし、兄が王配になることが決まっていたから、いずれ公爵になる。

 身分的に問題ないし、性格的にも大丈夫だと思われていた。



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