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最終章
残された時間《セレスティーナ視点》
「ジュディ。そこにいてもいいわ。でも、例え何があろうと手出しすることは許しません。その命令が聞けないのなら、あなたを護衛から外します」
「セレスティーナ様・・・それでは、いえ、でも・・・」
ジュディは困惑しているようです。
何があっても手出しするなということは、私が例え危険に晒されても見ていろということです。当然、従えないと言うでしょう。
そう言ったなら、私は彼女を部屋から出すつもりです。護衛から外すのですから、同じ部屋内にいることを許すつもりはありません。
きっとそうしたら、ジュディはアル兄様を呼びに行くでしょう。
チャンスはその一瞬のみです。
「ジュディ。決断なさい」
「で、出来ません。お側にいても手出しできないのであれば、護衛としている意味がありません。姫様。何故、そのようなことをおっしゃるのですか。私が姫様をお守り出来なかったことをお怒りなら、なんでも罰を受けます。ですから・・・」
「罰など必要ありません。それに、私は怒ってなどいません。ですが、主人の私の指示に従えないのなら、あなたは護衛から外します。部屋から出て行きなさい」
ジュディの絶望に染まる顔を見ながら、それでも私は冷たく言い放ちました。
ごめんなさい、ジュディ。
本当にあなたのことを恨んでも怒ってもいないの。
だけど、どうしても今しかチャンスはないの。
ごめんなさい。傷つけて。私のこと嫌いになってもいいわ、だからどうか許してね。
「し、失礼します」
ジュディは涙を堪えるように、小さくそう言うと、部屋を出て行きました。
私はすぐに、部屋の鍵を締めると、ディアナに向き直ります。時間はありません。すぐにアル兄様がやってくるでしょう。
「時間がありません。ディアナ様。聖女の力を使って、私の深層で眠るグレイスを起こして下さい」
「え?え、え?」
「時間がないのです。グレイスが目覚めないと、全てが終わってしまうのです。私がこのままセレスティーナとして生きることはできないのです。ディアナ様、早く!!」
私はディアナ様の両腕を掴んで、彼女に強く迫ります。
ディアナ様が戸惑っているのは分かります。ですが、ゆっくり説明している時間はありません。
「ディアナ様っ!!」
「わ、わかりました」
ディアナ様が私の両手を握って、目を瞑ります。
彼女と、そして私自身を淡い光りが包み始めた時、扉を叩く音と、アル兄様の声が聞こえました。
アル兄様。嘘ついてごめんなさい。
ジュディ。酷いこと言ってごめんなさい。
だけど。だけど、これしかないの。
グレイスに戻ってもらわないと、セレスティーナは死んでしまうの。
私の魂は、死んでしまっているから。グレイスの聖女の力で形作られているだけ。
グレイスの聖女の力は、ぼろぼろになった私の精神を癒やしてくれた。だから、その精神を保ったまま眠っていられた。
でも、グレイスの力なくしては、長くは保たないの。
ごめんなさい。言えなくて。
真実を知ったら、アル兄様もグレイスもきっと自分を責めるわよね。
だけど、お願い。お願い、グレイス。目覚めて。せめてお父様やお母様を悲しませたくないの。
だから。お願い。私のために、目覚めて。
「セレスティーナ様・・・それでは、いえ、でも・・・」
ジュディは困惑しているようです。
何があっても手出しするなということは、私が例え危険に晒されても見ていろということです。当然、従えないと言うでしょう。
そう言ったなら、私は彼女を部屋から出すつもりです。護衛から外すのですから、同じ部屋内にいることを許すつもりはありません。
きっとそうしたら、ジュディはアル兄様を呼びに行くでしょう。
チャンスはその一瞬のみです。
「ジュディ。決断なさい」
「で、出来ません。お側にいても手出しできないのであれば、護衛としている意味がありません。姫様。何故、そのようなことをおっしゃるのですか。私が姫様をお守り出来なかったことをお怒りなら、なんでも罰を受けます。ですから・・・」
「罰など必要ありません。それに、私は怒ってなどいません。ですが、主人の私の指示に従えないのなら、あなたは護衛から外します。部屋から出て行きなさい」
ジュディの絶望に染まる顔を見ながら、それでも私は冷たく言い放ちました。
ごめんなさい、ジュディ。
本当にあなたのことを恨んでも怒ってもいないの。
だけど、どうしても今しかチャンスはないの。
ごめんなさい。傷つけて。私のこと嫌いになってもいいわ、だからどうか許してね。
「し、失礼します」
ジュディは涙を堪えるように、小さくそう言うと、部屋を出て行きました。
私はすぐに、部屋の鍵を締めると、ディアナに向き直ります。時間はありません。すぐにアル兄様がやってくるでしょう。
「時間がありません。ディアナ様。聖女の力を使って、私の深層で眠るグレイスを起こして下さい」
「え?え、え?」
「時間がないのです。グレイスが目覚めないと、全てが終わってしまうのです。私がこのままセレスティーナとして生きることはできないのです。ディアナ様、早く!!」
私はディアナ様の両腕を掴んで、彼女に強く迫ります。
ディアナ様が戸惑っているのは分かります。ですが、ゆっくり説明している時間はありません。
「ディアナ様っ!!」
「わ、わかりました」
ディアナ様が私の両手を握って、目を瞑ります。
彼女と、そして私自身を淡い光りが包み始めた時、扉を叩く音と、アル兄様の声が聞こえました。
アル兄様。嘘ついてごめんなさい。
ジュディ。酷いこと言ってごめんなさい。
だけど。だけど、これしかないの。
グレイスに戻ってもらわないと、セレスティーナは死んでしまうの。
私の魂は、死んでしまっているから。グレイスの聖女の力で形作られているだけ。
グレイスの聖女の力は、ぼろぼろになった私の精神を癒やしてくれた。だから、その精神を保ったまま眠っていられた。
でも、グレイスの力なくしては、長くは保たないの。
ごめんなさい。言えなくて。
真実を知ったら、アル兄様もグレイスもきっと自分を責めるわよね。
だけど、お願い。お願い、グレイス。目覚めて。せめてお父様やお母様を悲しませたくないの。
だから。お願い。私のために、目覚めて。
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