「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

自害後の展開

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 私、山下百合が、乙女ゲーム『青の箱庭』のスピンオフであるライトノベル版のご令嬢アニエス・リリウムに転生したことで、あの悲惨な結末をひっくり返せるのではないか。

 現在、私はまだ夜の明けていない部屋で、対策を考えている。

 あと1時間もすれば、侍女が起こしにやってくるだろう。

 アニエスは生まれた時からの、王太子の婚約者。
 淑女教育は終え、現在は王太子妃教育を王宮で受けている、はずである。

 王宮に、着の身着のままで向かうわけにはいかない。
 淑女として完璧な令嬢としての姿で向かうために、どうしても早く起きなければならない。

 というか、朝早くから起きて、湯浴みにマッサージ後に朝食、その後とはいえ朝イチから夕方まで王太子妃教育って、鬼畜かっ!

 しかも学園に通うようになると、昼間に受けれないから、授業のあとから夜までになるのよね。

 前世の完徹を思い出すわ。
ブラック企業じゃないの?王族って。

 出来ることなら、学園に通う前と言わず、速攻で婚約解消して欲しい。

 もう少し、家族と友好を深めてたら、クランだって攻略されなかったかもしれないし。

 両親は、とてもとてもアニエスを愛してくれていた、みたいだけど。

 実際、両親のことが出てくるのは、アニエスが自害した後だ。

 愛娘の遺体を抱いて、泣き叫ぶ両親を、クランは冷ややかに見ていた。
 父親であるジオルドは、そんなクランを拘束して、何があったのか洗いざらい吐かせるのだ。

 ずっと婚約者に冷たくされていたこと。虐げられ、蔑まれていたこと。
 そして、王太子は婚約者がいながら、平民の聖女と呼ばれる少女と浮気をしていたこと。
 弟であるクランは、姉の味方をするどころか、聖女を虐めていたという冤罪で、姉を虐めていたことが、明らかになる。

 その事実に、ジオルドとアナスタシアは、王家への報復に立ち上がる。

 同じように、聖女に誑かされ婚約者を蔑ろにしていた、宰相の子息や騎士団長の子息、教皇の子息たちの婚約者の、侯爵家や伯爵家も共に立ち上がった。

 そして、無実の罪で断罪され、自害した美しき公爵令嬢の噂は、平民にまで広がる。
 王家の味方をするものはなく、平民たちは王家に見切りをつけて、隣国や他の貴族の領地へと逃げ出した。

 振り上げた拳は、相手を打ち倒すまでおろされることはなく、それぞれがそれぞれの敵と銘打った相手を殺すまで続く。

 最終的には、攻略対象たちはそれぞれの婚約者の親たちに殺され、クランもジオルドの手にかかった。

 だが、王太子と聖女を殺したのは、王太子宮に押し入った騎士たちや、王宮に勤める役人たちだった。

 自分たちに労いの言葉をかけてくれていた公爵令嬢を死に追い詰めた王太子を、彼らは許せなかった。

 ライトノベルの中で、そう書かれていた。
 アニエスは少なくとも、両親や周囲の人たちには愛されていたのだ。

 だが、アニエスはそれでも自害しただろう。彼女は、王太子のことを本当に愛していた。彼しか見えていなかったのだ。






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