「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

味のわからないランチタイム

 結局、ローラ様のお誘いから逃げることは叶わず、私は王妃様と王女様という、いわゆるこの国のトップレディたちとランチを摂ることになってしまった。

 はっきり言おう。
迷惑である。どれだけ王宮シェフの腕がよかろうと、どれだけ高級食材を使った豪華な食事が並ぼうと、こんな緊張感ある中で食べたら、味なんかするわけがない。

 こんなのなら、1人で食べるコンビニ弁当の方が何倍も美味しく感じるわ。

 王妃様と王女様は親子だから良いけれど、私は王太子の婚約者とはいえ、臣下である。
 公爵家の顔に泥を塗るような、失態をするわけにはいかない。

「アニエス。口に合わないかしら?」

「いえ。とても美味しいですわ」

「食が細いのかしら?駄目よ、王太子妃は激務なのだから、しっかり食べないと倒れてしまうわ」

 王妃様。お気遣い下さるのなら、もう少し王太子妃教育にお休み下さい。
 そして、公爵家に帰して食事を摂らせて下さい。

 緊張感とストレスのせいで、味がしないんです。

 そう言えたなら、どれだけ楽か。まぁ、そんな事を言えるくらいなら、緊張もしないし、ストレスも感じないけど。

 そんなことを考えながら、ニコニコと淑女スマイルで、味のしない食事を何とか飲み込む。

 テーブルマナーに問題がなかったのは、良かったけど、こんなことなら婚約者様とついでにクランも巻き込んでランチをした方が良かったかもしれない。

 何とかランチを終えた時には、私は気持ち的に3キロくらい痩せた気分だった。
 一応、残さず食べたから、実際は痩せてはないだろうけど、身に付いた気がしないわ。

 残さず食べたことで、王妃様はあの後何も言わなかった。

 残しませんよ。だって、誰かが一生懸命育てて、それをシェフが手をかけて作ってくれたんですからね。

 それに、食べ物を粗末にするなんて、社会人だった庶民の百合としては、そんなこと絶対ダメ!ですから。

 しかし、疲れたランチタイムだった。
もう帰りたい。帰してくれませんかね?

 だけど、それは叶わぬ願いだったみたいで、食事の後のお茶をいただいていた時、その爆弾は投下された。

「お母様!お兄様とお姉様は、もう少し仲良くなさるべきだと思いますわ。お2人の距離がもう少し近くなるためにも、明日からお2人だけの時間を取るべきです」

「そういえば、今日はマリウスはアニエスをエスコートしていなかったわね」

「お兄様はもっと、お姉様に好かれる努力をなさらなければならないと思います」

 うわぁ。ローラ様、それ、まずいヤツ。王妃様に、私が婚約者様を好きでないって言ってるのと同じだから。

 政略結婚の相手とはいえ、自分の息子が好かれてないなんて言われて、怒らない母親いないと思う。
 勘弁してよ、王女様。
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