「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

心まで美しい人《マリア視点》

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「何をなさっているのですか」

 そう言って、私とご令嬢方の間に立って下さった方。
 腰まで伸びた青みを帯びた銀色の髪をハーフアップにされたご令嬢は「アニエス様」と呼ばれていました。

 アニエス・リリウム様。
後で、ご丁寧にご挨拶してくださり、公爵家のご令嬢だということがわかりました。
 しかも、王太子殿下の婚約者様だそうです。

 私は、平民で、少し貧しい家庭で育ちました。
 平民には魔力持ちなどいません。ですから私も、15歳になったら平民の通う学校に2年間通う予定でした。

 なのに、ある日突然、ひどい熱を出して医師に診てもらいに診療所に行ったとき、訪れていた神官の方が、これは魔力を持っているのではと言い出されたのです。

 平民の、魔力を持たない私たちには分からないことですが、どうやら魔力を持たれている貴族の方々は、生まれて間もない時に必ず僅かな熱を出されるのだそうです。

 それが、この年齢になって魔力を持ったせいで、高熱になったのではないかとおっしゃるのです。

 その後、教皇様と呼ばれる、とても偉い方に私は聖の魔力持ち、聖女だと認定され、13歳から通わなければならない魔法学園に通うようにと言われました。

 その学園に通うのは当然、皆さん貴族の方です。

 突然、そんな中に放り込まれることになり、不安でいっぱいだった私は、正門を越えたあとに、数人のご令嬢に手を掴まれ、裏庭と思しき場所へと連れてこられました。

 突然魔力が生まれたことを責められても、私だって望んで魔力持ちになったわけではありません。
 そう思っていたのが表情に出ていたのか、ご令嬢に頬を叩かれたのです。

 その時に、私を助けて下さったのが、アニエス様です。

 その後、とても辛辣な物言いをなさるご令息様や、アニエス様の弟様、それから王太子殿下まで現れて、私の頭の中はパンクしそうでした。

 私を医務室まで連れて行くとおっしゃって下さるアニエス様に、王太子殿下がデートのお約束をなさっていて、アニエス様のことをとてもお好きなんだということが分かります。

 それは当然のことだと思います。
だって、振り返られたアニエス様は、絵の中で見るどのお姫様よりお美しくて、しかも平民である私にまで優しくしてくださる、心まで美しい方なのです。

 しかも、お友達になってくださると言った時のアニエス様は、それまで王太子殿下のことを王子様と呼んだ私を嗜められていた時と違って、なんていうか守ってあげたくなる感じで・・・

 本当に図々しいことですけど、私は頷いてしまったのです。
 しかも、アニエス様とお呼びすることになってしまいました。

 了承した私にアニエス様は、とても美しい花笑みを浮かべて下さったのです。

 私は初めて、聖女になれて良かったと思えました。だって、こんなに素敵な方と出会うことができたのですから。
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