「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

強制力か否か

 あの街歩きの日以来、ほんの少しだけどマリアの様子が変わった気がする。

 私に対しては、ほとんど変わりない。
眩いばかりの笑顔で、今まで通りに仲良くしてくれている。

 周囲に対しても、今まで通りに振る舞っているように見える。
 フィリアたちとも仲良く出来ているようだし、時々だけどクランやレイノルドたちとも話しているのを見かける。

 ただ唯一、マリウス殿下とだけは話さない。
 目すら合わせようとしない。

 当然のことながら、マリウス殿下は自分とだけ話さないマリアのことを気になっているみたいだった。

「僕は、嫌われているみたいだね。僕が、アニエスの婚約者だからだろうか」

 ん?
どうして私の婚約者だからって、マリアが嫌うわけ?

「そんなことはないと思いますわ」

「いや、マリアはアニエスのことをとても大切に思ってるみたいだからね。僕はさしずめライバルというところなんだろう」

「確かに、マリア様がわたくしのことを大切に思ってくれていることは、わたくしも理解していますが、ライバルというよりあれは・・・」

 マリアは確かに、私と仲良くしてくれている。
 マリアは、本当に正統派のヒロインなんだ。
 優しくて、頑張り屋で、本当に心の美しい女の子。それがヒロイン。

 マリアは、そのヒロインそのものみたいな子だ。

 私は、そんなマリアのことが大好きである。
 乙女ゲームをしてた時も、ヒロインのことは大好きだった。
 ラノベ版で、アニエスから王太子を奪うことになったけど、それでもヒロインはアニエスを傷つけようとしてたわけじゃない。

 アレは婚約者がいるのに、それを蔑ろにして、ヒロインに傾倒した婚約者、マリウス・ハイドランジア王太子殿下が悪いのだ。

 もちろん、筆頭公爵家の令嬢との婚約を解消するのは、大問題だっただろう。
 ましてや相手が平民だ。王太子妃教育を終え、王妃教育を受けているアニエスを捨てる選択肢は、許してもらえない可能性が高い。

 だけど、マリアは平民だけど、聖女だ。
そして、マリウス殿下が王太子の座を捨てるとまで言ったなら、万にひとつの可能性かもしれないけど、許されたかもしれないのだ。

 アニエスが・・・
マリウス殿下の気持ちを、泣く泣くだけど呑む可能性があったと思うから。

 アニエスに甘いリリウム公爵家の人間は、最終的にアニエスの気持ちを尊重した可能性があるのだ。

 だからー
私はマリアが嫌いではないし、憎しみの対象でもない。

 そして、今ここにいるマリウス殿下のことも、嫌いではないのだ。

 ラノベの中では、マリアと出会った途端に、アニエスに冷たくなったマリウス殿下。
 でも、今ここにいる殿下は、私のことを大切にしてくれていると思うから。

 でなく、本当のアニエスだったなら、きっと、マリウス殿下のことを心から愛しただろうと思えた。




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