「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

決着

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 割れた結界が、ガラスのように魔獣に降りかかったとして、それがどの程度の効果があるのかは分からない。

 だけど、あの爆発で倒せなかったのだ。
このまま拘束していても、いずれは魔力切れを起こしてしまう。
 ならば、今できることをするしかない。

「うまく行くかどうかは分かりません。わたくしの浅慮にお付き合いいただき、申し訳ないですわ」

「なぁに言ってんの。さすがは未来の王太子妃様だよ。頭もキレるし、判断力もある。王太子たる殿下を危険から遠ざけ守る姿は、未来の王妃として相応しい姿だね。イザベラがいなかったら惚れてたかもなぁ」

「まぁ!ノックス様ってば、ご冗談がお上手ですこと」

 こういう場面で軽口をきいて、緊張をほぐすあたりがレイノルドが場数を踏んでいる証拠だ。

 教皇子息として、レイノルドは国境付近の警備などにも赴いていると聞く。
 騎士団長子息のニコラスも一緒に行くこともあるらしいが、直情型で良くも悪くも真っ直ぐ過ぎるニコラスは、それゆえに諍いを起こすこともあるらしい。

「さて。それじゃあ、始めようか。先生方もいいですね?」

「本来なら、君たちを逃すべきなのに、我々が未熟なために済まない」

「そんなのは仕方ないことですよ。父上たちでもいたら、もっと良い手もあったかもですけど、ないものねだりしたところで仕方ありません。やれることをやりましょう」

 うん。私は、レイノルドのこういう考え方は好きだ。
 それに、ラノベの中に出てきた魔獣がコレなら、教皇でも倒せなかったかもしれない。
 
「じゃあ、いくよ?」

 レイノルドの、キャッチボールをするような、軽い口調のあと、冷気の球は私の結界の上空でぴたりと止まった。

 意識を集中して、その球が入るだけの小さな空間を空けるイメージをする。

 魔法とは、イメージする力が大事なのだ。曖昧なイメージでは、その威力は半減するし、イメージ力が確かなら、その制御も出来る。

 この世界に転生してから、黙々と魔法について勉強した甲斐があったというものだ。

 冷気の球が入ったと同時に、瞬時に結界を閉じる。

 途端ー

 激しい破裂音が結界内で起こった。

 結界が割れることはなかったが、膜のように張られた結界は、内部で起きた破裂に形を変えながら膨張収縮を繰り返す。

 どうやら、熱の塊と化した魔獣は、結界内に入った冷気の球と触れたことで破裂を引き起こしたようだ。

 結界内で激しく破裂し、どうやら危機を脱したようだと理解する。

 ホッと息をついて、結界を解いた途端、体の内部から何か大きなものが引き出されるような気がしてー

 私はそのままその場で意識を失った。




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