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聖女覚醒編
私が悪いわけではないのに
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目の前のマリ様が怖い。
満面の笑みなのに、その笑みが黒すぎる。
あの告白をして以来、私はすっかりマリ様に弱くなってしまった。
あんなに、相手を子供だとか恋愛対象外だとか言えてたのが嘘のように、マリ様の表情ひとつに気持ちが左右されてしまう。
脳内で、アニエスが大きくため息をついているのが見える気がする。
「貴女、本当にわたくしより年上ですの?まるで子供ですわよ」
だって、好きな人に好きになって貰えたの初めてで。
しかも、誰もが羨む素敵な人で。
その人は私のことをすごく好きでいてくれて。
そんな奇跡あるんだなって。
前世は情けない終わり方したけど、こんな幸せな世界に生まれ変われたんだって思うと、その幸せを失うのが怖くなって。
「アニエス?聞いてる?」
「はっ、はいっ!」
「じゃあ、答えてくれるかな?どうしてあんなのに、僕の大切なアニエスが関わってたの?」
だって、だって、仕方ないと思う。
私が悪いわけじゃないのにぃ。
「え、と、わたくしは公爵家の娘で・・・」
「うん」
「それで、王太子殿下であるマリ様の婚約者で・・・」
「うん、そうだね」
「ま、マリアは大切な友達で・・・」
「それで?」
えーん。
どんな理由を並べようと、納得してくれそうにない~
というか、マリ様は、理由はわかってる上で絶対聞いてきてる。
「だから、その、わたくしが対処すべきと判断しましたの」
「ねぇ、アニエス。それは確かに間違いじゃないけど、あんな道理が通じない相手に、ご令嬢2人で立ち向かって、もし何かあったらどうするの?僕に声をかけて、一緒に話すべきじゃないの?」
「そんなの駄目ですっ!」
そんなのは駄目だ。
大体、学園内のこととはいえ、この程度のことを対処できないようでは、王太子妃としては不合格だ。
社交界を束ねるのは、王妃様のお役目で、いずれ私はそれをお手伝いすることになるんだから。
「どうして駄目なの?僕はそんなに頼りない?王太子妃の役目とか、そんなことよりも、僕はアニエスに傷ついて欲しくないんだ」
「マリ様が頼りないなんて・・・そんなこと思ってもいません」
「じゃあ、どうして駄目なの?確かにアニエスは、いずれ王太子妃になるけど、あんなのの対応を、君が絶対にしなきゃならないわけじゃない。僕がしたからといって問題ではないんだ」
「わたくしが・・・わたくしが嫌なのです。マリ様のことを愛称で呼ぶような方に・・・マリ様を近づけたくないのです」
もちろん、あの時は、マリアを早く助けなきゃと思ったのもある。
それに、未来の王太子妃として、ちゃんと対処しなきゃと思ったのも事実。
だけど、これからも彼女への対応にマリ様の手を煩わせたくないのは、マリ様をチェリー嬢に近づけたくないって、そう思っているから。
満面の笑みなのに、その笑みが黒すぎる。
あの告白をして以来、私はすっかりマリ様に弱くなってしまった。
あんなに、相手を子供だとか恋愛対象外だとか言えてたのが嘘のように、マリ様の表情ひとつに気持ちが左右されてしまう。
脳内で、アニエスが大きくため息をついているのが見える気がする。
「貴女、本当にわたくしより年上ですの?まるで子供ですわよ」
だって、好きな人に好きになって貰えたの初めてで。
しかも、誰もが羨む素敵な人で。
その人は私のことをすごく好きでいてくれて。
そんな奇跡あるんだなって。
前世は情けない終わり方したけど、こんな幸せな世界に生まれ変われたんだって思うと、その幸せを失うのが怖くなって。
「アニエス?聞いてる?」
「はっ、はいっ!」
「じゃあ、答えてくれるかな?どうしてあんなのに、僕の大切なアニエスが関わってたの?」
だって、だって、仕方ないと思う。
私が悪いわけじゃないのにぃ。
「え、と、わたくしは公爵家の娘で・・・」
「うん」
「それで、王太子殿下であるマリ様の婚約者で・・・」
「うん、そうだね」
「ま、マリアは大切な友達で・・・」
「それで?」
えーん。
どんな理由を並べようと、納得してくれそうにない~
というか、マリ様は、理由はわかってる上で絶対聞いてきてる。
「だから、その、わたくしが対処すべきと判断しましたの」
「ねぇ、アニエス。それは確かに間違いじゃないけど、あんな道理が通じない相手に、ご令嬢2人で立ち向かって、もし何かあったらどうするの?僕に声をかけて、一緒に話すべきじゃないの?」
「そんなの駄目ですっ!」
そんなのは駄目だ。
大体、学園内のこととはいえ、この程度のことを対処できないようでは、王太子妃としては不合格だ。
社交界を束ねるのは、王妃様のお役目で、いずれ私はそれをお手伝いすることになるんだから。
「どうして駄目なの?僕はそんなに頼りない?王太子妃の役目とか、そんなことよりも、僕はアニエスに傷ついて欲しくないんだ」
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「じゃあ、どうして駄目なの?確かにアニエスは、いずれ王太子妃になるけど、あんなのの対応を、君が絶対にしなきゃならないわけじゃない。僕がしたからといって問題ではないんだ」
「わたくしが・・・わたくしが嫌なのです。マリ様のことを愛称で呼ぶような方に・・・マリ様を近づけたくないのです」
もちろん、あの時は、マリアを早く助けなきゃと思ったのもある。
それに、未来の王太子妃として、ちゃんと対処しなきゃと思ったのも事実。
だけど、これからも彼女への対応にマリ様の手を煩わせたくないのは、マリ様をチェリー嬢に近づけたくないって、そう思っているから。
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