「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

聖女としてではなく《カイ視点》

 5歳も年下の、主人と同い年の少女。
しかも、聖女様だという。

 俺には絶対に縁のない相手だと思っていた。
 実際、彼女と出会ったのは去年だが、その時はほとんど会話などしたことがなかった。

 初めて、彼女を意識したのは・・・
我が主人であるアニエス様が眠りにつかれていたあの時だ。

 アニエス様を思い、それでも公爵家に訪れて来ることが出来ずに、離れた場所から祈るようにリリウム公爵家を見つめていた彼女。

 その頬に流れる真珠のような涙を見た時、胸の奥がひどく痛んだ。

 王太子殿下の許可を取り、アニエス様の元へと誘った。

 確かに、彼女は平民だ。
だが、我が主人はそんなことで友人を判別したりしないし、お館様たちもアニエス様の大切なご友人なら喜んでお招きするだろう。

 ましてや、彼女は聖女様だと教皇様から認められているのだ。

 そんな彼女がアニエス様に近づくことを厭おうとするのは、アニエス様のことを溺愛していて、主人に近付く者は異性同性問わずに嫌がる王太子殿下くらいだろう。

 本当に、まだまだ子供だと思ってしまうが、あの方ほどアニエス様を想っている人もいないことも事実だ。

 アニエス様の手を取り、涙を流しながら目覚めを祈る彼女の姿に、初めて王太子殿下の気持ちがほんの少し理解出来た。

 彼女を独占したい。
この腕の中に閉じ込めて、傷つくことのないように、守りたい。

 彼女が笑顔を向けるのが、自分だけであって欲しい。

 まさか、5歳も年下の少女に、こんな感情を抱くとは思わなかった。

 だからー
あの日、彼女が行方知れずだと聞いた俺は、激しく動揺した。

 彼女を心配している、アニエス様の憂いを晴らしたい。
 それは紛れもなく事実だ。
だが、俺自身が彼女を見つけ出したい。そんな気持ちがあった。
 
 昔馴染みのセリオに協力を求めた。
アイツほど下町のことに詳しい奴はいない。

 できれば俺自身が見つけたいが、そんな自分のプライドより、彼女を見つけることのほうが大事だ。

 そして、その判断は間違っていなかった。
同じく昔馴染みのジグルたちの手を借りて、数時間のうちに彼女の居場所が判明した。

 良かった。

 彼女は、西区にある小屋にいるらしい。
最近流れてきた、他国の人間の溜まり場だという。

 ジグルに任せて待つことができず、俺も一緒に行くことにした。

 面白がったセリオがついて来ると言ったので、これで救出できることは間違いない。

 救出後にすぐにでも、アニエス様のもとへお連れしたい。
 それに、捜索に繰り出している王太子殿下たちにも報告しなければならないからな。

 俺は、安堵した気持ちに言い訳する様に、そう思った。


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