「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

聖女としてではなく2《カイ視点》

 部屋に飛び込み、ベッドの上で押さえつけられている彼女を見た時、血が沸騰した。

彼女にのしかかっている男を蹴り飛ばし、彼女の口に指を押し込んだ。

 何故、そんなことをしたのか。
嫌な予感がしたとしかいいようがない。

 差し込んだ瞬間、彼女の歯が指に食い込んだ。
 痛みに顔を顰めるものの、彼女が舌を噛むつもりだったと理解して、自分の予感をほめてやりたくなった。

 血が滲む指に、泣きながらハンカチを巻き付けてくれる彼女に、大丈夫だと微笑む。

 指の怪我くらい、どうということはない。もし、この指が間に合わなかったらと思うと、心臓が握り潰されているような気持ちになる。

 だが、間に合った。
気を失った彼女を公爵家へとお連れし、全ての報告を行う。
 ホッとして、後始末をしていた俺は、彼女が王太子殿下や教皇ご子息に対して怯えをみせたと聞いて息が止まった。

 間違いなく、あの時のことが原因だ。
そうだ。彼女はまだ14歳の少女だ。
あんな風に男に押さえつけられたら、恐怖を感じて当たり前じゃないか。

 俺が、もっと早く助けていたら。

 それでも、彼女は何もないように振る舞おうとしていたらしい。
 すぐに気付いた王太子殿下たちが距離を取り、学園もしばらく休むようにとおっしゃられたそうだ。

 アニエス様も、心を痛めていらっしゃる。俺にできることならなんでもしたいが、出来るのは近づかないことくらいだろう。

 そう思い、王太子殿下やアニエス様が主犯格を断罪に向かわれるのを見送った。

 アニエス様は、目覚めた聖女様を1人にしたくなかったようだが、どうしても犯人に言いたいことがあるらしく、俺に後を頼んで出かけられた。

 目覚めた彼女を家に送らねばならないが、誰か侍女に頼んだ方がいいだろう。

 そう思い、送る準備をしていた俺の元に、彼女が駆け寄ってきた。

 そして、指の怪我を改めて詫びられ、助けた礼まで言われた。

 え?

 王太子殿下や教皇様ご子息が近づくことに、怯えられたのではないのか?

 驚いた様子の俺に、彼女はその澄んだ瞳を恥ずかしそうに伏せ、俺のことは怖くないのだと呟いた。

 王太子殿下たちが、自分に危害を加えないことは、頭では理解しているのだと。

 だけど、条件反射のように、体がビクッと震えてしまうのだと。

 それを申し訳なく思うのに、自分ではどうしようもないのだと。

 ただ、何故かは体が震えないのだと言った。

 俺だけは・・・

 俺は醜い男だ。
彼女があんなに怖い思いをしたのに、殿下たちに申し訳ないと心を痛めているのに、自分だけが特別なことを、嬉しいと思ってしまうなんて。

 ずっとこのまま、俺だけが彼女に近づくことができるならいいのにと、そんなふうに思ってしまうなんて。

 なんて醜い。
ああ。王太子殿下の気持ちが、心から理解できる。

 心から欲する相手を、独占したい気持ち。誰にも触れさせず、閉じ込めたい気持ち。

 俺は、マリア嬢のことを・・・






 

 
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