「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

デートの終わりに

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 あれから何軒かの店を巡り、私たちは帰ることとなった。

 マリアたちはどこかへ向かってたから、カイはこれからプロポーズするのかもしれない。

 さすがにそこは見ちゃ駄目だよね。
と思ったから、素直に帰ることにした。

 いや。帰ったら、カイに聞くけどね。聞いてもいいよね?普通に、気になるし。

 馬車に乗ると(もちろん街までは馬車で来ていたので)マリウスから、提案を受けた。

「帰る前に、運河の水門に行かないかい?」

「ええ。水門からの風景は素敵だと聞いています。楽しみですわ」

 王都には、王都へ物資を運ぶ運河がある。その水門からは、王都を見渡すことが出来るのだ。

 そこで、指輪渡そうかな。
いや。それとも、帰り際の方がいいかな。

 マリウスは絶対、笑顔で受け取ってくれるけど、どうして指輪なのかって聞かれたら、答えづらい。
 まさか、平民の間で流行ってるんですとも言えないし。

 水門に着くと、マリウスは警備の人間と少し話してから、私を水門内部へと誘った。
 内部の階段を登ると、水門上部へとたどり着く。

 夕焼けに染まる運河の美しさは、まるで絵画のようだった。

「綺麗・・・」

 宵闇に覆われてしまうまでの、わずかな時間、オレンジに染まる運河の煌めきと、広がる街並み。

 あまりの美しさに、言葉が出てこない。

 前世でも、綺麗な風景や、夜景を見ることはあった。
 だけど、好きな人と一緒に見る景色が、こんなに美しいものだとは知らなかった。

「ここは、一般の人間は立ち入れないからね。僕のお気に入りの場所なんだ。アニエスをいつか連れて来たいと思っていたんだよ」

「そう・・・なんですのね。本当に綺麗。連れてきて下さり、ありがとうございます」

 陽が落ちるまでに、下に降りねばならないが、ずっとここで街の色合いが変わって行くのを見ていたい。
 そう思わせるほどの魅力があった。

 だから、私は自然に、バッグの中からマリウスに指輪の包みを手渡していた。

「これは?」

「あの・・・マリ様に貰っていただきたいのです」

「僕に?開けてもいいかい?」

「はい・・・」

 しまった。
見られたあとの反応に困るから、帰りに渡そうと思ってたのに。
 雰囲気に流されて、つい渡してしまったわ。

 指輪なんて・・・
しかも王太子であるマリウスなら、もっと豪華な石のついた指輪だって持ってるだろうに、あんなオモチャみたいなの、引かれないかな・・・

 箱を開いたマリウスが、指輪を見てほんの少し眉を上げる。

 直後ー
私はマリウスにキツく抱きしめられていた。
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