99 / 128
聖女覚醒編
デートの終わりに
しおりを挟む
あれから何軒かの店を巡り、私たちは帰ることとなった。
マリアたちはどこかへ向かってたから、カイはこれからプロポーズするのかもしれない。
さすがにそこは見ちゃ駄目だよね。
と思ったから、素直に帰ることにした。
いや。帰ったら、カイに聞くけどね。聞いてもいいよね?普通に、気になるし。
馬車に乗ると(もちろん街までは馬車で来ていたので)マリウスから、提案を受けた。
「帰る前に、運河の水門に行かないかい?」
「ええ。水門からの風景は素敵だと聞いています。楽しみですわ」
王都には、王都へ物資を運ぶ運河がある。その水門からは、王都を見渡すことが出来るのだ。
そこで、指輪渡そうかな。
いや。それとも、帰り際の方がいいかな。
マリウスは絶対、笑顔で受け取ってくれるけど、どうして指輪なのかって聞かれたら、答えづらい。
まさか、平民の間で流行ってるんですとも言えないし。
水門に着くと、マリウスは警備の人間と少し話してから、私を水門内部へと誘った。
内部の階段を登ると、水門上部へとたどり着く。
夕焼けに染まる運河の美しさは、まるで絵画のようだった。
「綺麗・・・」
宵闇に覆われてしまうまでの、わずかな時間、オレンジに染まる運河の煌めきと、広がる街並み。
あまりの美しさに、言葉が出てこない。
前世でも、綺麗な風景や、夜景を見ることはあった。
だけど、好きな人と一緒に見る景色が、こんなに美しいものだとは知らなかった。
「ここは、一般の人間は立ち入れないからね。僕のお気に入りの場所なんだ。アニエスをいつか連れて来たいと思っていたんだよ」
「そう・・・なんですのね。本当に綺麗。連れてきて下さり、ありがとうございます」
陽が落ちるまでに、下に降りねばならないが、ずっとここで街の色合いが変わって行くのを見ていたい。
そう思わせるほどの魅力があった。
だから、私は自然に、バッグの中からマリウスに指輪の包みを手渡していた。
「これは?」
「あの・・・マリ様に貰っていただきたいのです」
「僕に?開けてもいいかい?」
「はい・・・」
しまった。
見られたあとの反応に困るから、帰りに渡そうと思ってたのに。
雰囲気に流されて、つい渡してしまったわ。
指輪なんて・・・
しかも王太子であるマリウスなら、もっと豪華な石のついた指輪だって持ってるだろうに、あんなオモチャみたいなの、引かれないかな・・・
箱を開いたマリウスが、指輪を見てほんの少し眉を上げる。
直後ー
私はマリウスにキツく抱きしめられていた。
マリアたちはどこかへ向かってたから、カイはこれからプロポーズするのかもしれない。
さすがにそこは見ちゃ駄目だよね。
と思ったから、素直に帰ることにした。
いや。帰ったら、カイに聞くけどね。聞いてもいいよね?普通に、気になるし。
馬車に乗ると(もちろん街までは馬車で来ていたので)マリウスから、提案を受けた。
「帰る前に、運河の水門に行かないかい?」
「ええ。水門からの風景は素敵だと聞いています。楽しみですわ」
王都には、王都へ物資を運ぶ運河がある。その水門からは、王都を見渡すことが出来るのだ。
そこで、指輪渡そうかな。
いや。それとも、帰り際の方がいいかな。
マリウスは絶対、笑顔で受け取ってくれるけど、どうして指輪なのかって聞かれたら、答えづらい。
まさか、平民の間で流行ってるんですとも言えないし。
水門に着くと、マリウスは警備の人間と少し話してから、私を水門内部へと誘った。
内部の階段を登ると、水門上部へとたどり着く。
夕焼けに染まる運河の美しさは、まるで絵画のようだった。
「綺麗・・・」
宵闇に覆われてしまうまでの、わずかな時間、オレンジに染まる運河の煌めきと、広がる街並み。
あまりの美しさに、言葉が出てこない。
前世でも、綺麗な風景や、夜景を見ることはあった。
だけど、好きな人と一緒に見る景色が、こんなに美しいものだとは知らなかった。
「ここは、一般の人間は立ち入れないからね。僕のお気に入りの場所なんだ。アニエスをいつか連れて来たいと思っていたんだよ」
「そう・・・なんですのね。本当に綺麗。連れてきて下さり、ありがとうございます」
陽が落ちるまでに、下に降りねばならないが、ずっとここで街の色合いが変わって行くのを見ていたい。
そう思わせるほどの魅力があった。
だから、私は自然に、バッグの中からマリウスに指輪の包みを手渡していた。
「これは?」
「あの・・・マリ様に貰っていただきたいのです」
「僕に?開けてもいいかい?」
「はい・・・」
しまった。
見られたあとの反応に困るから、帰りに渡そうと思ってたのに。
雰囲気に流されて、つい渡してしまったわ。
指輪なんて・・・
しかも王太子であるマリウスなら、もっと豪華な石のついた指輪だって持ってるだろうに、あんなオモチャみたいなの、引かれないかな・・・
箱を開いたマリウスが、指輪を見てほんの少し眉を上げる。
直後ー
私はマリウスにキツく抱きしめられていた。
159
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる