「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

デートの終わりに2

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「マリ様?」

 私はどうして突然、マリウスに抱きしめられてるんだろう。

 指輪が嫌で・・・ってことはないわよね?抱きしめてきてるんだし。逆?嬉しいってことよね、普通に考えると。

「アニエス。この指輪の意味は、プロポーズでいいのかな?」

 プロポーズ?違う!いや、違わないけど、違うというか。
 そんな大それたものじゃなくて、婚約者の瞳の色のドレスを纏うのと、同じようなものというか。

 えーと。改めて言葉にされると、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

 カイがマリアに指輪を買うって聞いて、良いな、恋人同士っぽいなって思ったというか。

 だけど、そんなこと言えない。
だって、そんなの言ったらマリウスに指輪を強請ってるみたいだ。

 抱きしめられたままの私の顎に、マリウスの指がかかり、上を向かされた。

 そのまま、マリウスの綺麗な顔が近づいて来て、唇が重なった。

 何度も繰り返し、触れては離れる口づけに、私はマリウスの胸元をギュッと握りしめる。

 マリウスの唇が離れる頃には、私は息も絶え絶えに、マリウスの胸にもたれかかった。

「大丈夫?」

 優しく背中を撫でてくれるけど、あなたが原因だからね。

 涙目で睨むと、マリウスは熱のこもった瞳で私を見ていた。

「そんな可愛い顔をして・・・僕の忍耐力を試してるの?」

「違っ・・・」

「好きだよ、アニエス。僕は君のことが好きで好きで、もうどうしても君だけは手放せない。君がいなければ、僕はもう呼吸をすることすら出来ない気がする。君は、多くの人に愛される人だから、僕は君を閉じ込めて、誰にも見せたくないって思ってしまう。愛してる、アニエス。どうか、僕と結婚して欲しい」

 マリウスの形の良い唇が紡ぐ言葉に、私は馬鹿みたいな顔で彼を見つめた。

 結婚・・・するよね?だって、婚約者だから。
 だけどマリウスは、婚約者だから結婚しようって言ってるんじゃないんだ。

 私のことが好きだから・・・
だから、結婚して欲しいって言ってくれてるんだ。

 マリウスの言葉が体中に浸透して、その幸せにめまいが起きそうだ。

 涙が溢れそうな目元に、マリウスがチュッと口付けてくる。

 このハイドランジア王国の王太子のマリウス。
 金色の髪に、キラキラと輝く夏色の空の瞳。まだ14歳だから、きっと背ももっと高くなるだろう。

 誰からも好かれるのは、マリウスだ。
優しくて、賢くて、誰からも愛される王子様。

 そんな人が、私のことを好きだと言ってくれている。

 マリウスの背中に、そっと手を伸ばした。胸に縋るように、顔を押し当てる。

「マリウス・ハイドランジア王太子殿下」

 呼びかけると、マリウスの体に力が入ったのが分かった。
 その背中に伸ばした手で、マリウスにぎゅっとしがみ付く。

「私を貴方のお嫁さんにしてください」



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