101 / 128
聖女覚醒編
愛しい人《マリウス視点》
しおりを挟む
抱きしめたアニエスの髪に、顔を埋める。
僕の婚約者は、本当に可愛い。
「私をあなたのお嫁さんにしてください」
アニエスにそう言われた時、嬉しすぎて気を失いそうだった。
僕たちは、婚約者同士だ。
だから、2年後には婚姻することが決まっている。
だけど僕はアニエスのことを、家と家の契約としての婚約者ではなく、心から愛する相手として、結婚したいと思っている。
何にも興味の持てなかった僕が、僕に興味を失くした婚約者のことを気になり始めた。
そして、一緒に過ごすうちに、アニエスのことしか見えなくなっていた。
コロコロとよく変わるその表情。
本人は、貴族令嬢らしく変えてないつもりなのだろうが、ずっと一緒にいた僕には手に取るように分かった。
誰からも愛される、身分で決して人を見ない性格。
大切な人のためなら、無茶なことでもやろうとする無鉄砲さ。
どれもが僕の心をとらえて離さない。
だから、彼女の侍従であるカイのデートの日、僕はアニエスに贈るプレゼントをポケットに忍ばしていた。
僕の瞳の色である、サファイアの石の付いた指輪。
公爵令嬢であり、王太子の婚約者であるアニエスには、大きな石をと思ったのだが、セリオから小さめの、普段使い出来るようなデザインのものをとアドバイスを受けたのだ。
確かに大きな石のついた指輪は、夜会などでないと付けないだろう。
特にアニエスは、あまりそういうものを好まない。
最近、平民の間で、恋人に指輪を贈って結婚を願うというのが、流行っているのだそうだ。
セリオが何故それを、僕に教えてくれたのかはわからない。
だけど僕は、セリオのアドバイスに従うことにした。
婚約者として結婚前にプロポーズするつもりではあるが、学生である今、恋人としてアニエスに結婚を申し込みたい。
そう思ったのだ。
だから、デートの最後に水門へと誘った。
水門の内部は、一般の人間は立ち入りが出来ない。
王都を一望出来る水門で、2人きりで美しい景色を見ながら指輪を渡そう。そう決めていた。
それなのに。
まさか、アニエスから指輪を渡されるとは思わなかった。
アニエスは、セリオを知らない。
もしかしたらカイから聞いたのかもしれないが、それでもアニエスが僕に指輪を贈ろうと思ってくれたことが、嬉しくて仕方なかった。
何度も口付けて、真っ赤になったアニエスのことが愛しくて仕方ない。
その赤く染まった細い首筋に、引き寄せられそうになって、僕は慌てて目を逸らした。
先日、レイノルドがあまりに消沈しているので話を聞いたら、婚約者であるファレノプシス嬢の首筋に、自分のものだという痕を付けたら、痕が消えるまで口をきいてもらえなかったのだそうだ。
コイツは何をやっているんだか。
その時はそう思ったが、今ならその気持ちがわかる。
僕のものだという印を付けたい。
彼女を束縛したい。
自分の欲をグッと堪える。
アニエスに口をきいてもらえなかったら、僕は軽く死ねる。
アニエスの髪に顔を埋めながら、僕は大きく息を吐いた。
僕の婚約者は、本当に可愛い。
「私をあなたのお嫁さんにしてください」
アニエスにそう言われた時、嬉しすぎて気を失いそうだった。
僕たちは、婚約者同士だ。
だから、2年後には婚姻することが決まっている。
だけど僕はアニエスのことを、家と家の契約としての婚約者ではなく、心から愛する相手として、結婚したいと思っている。
何にも興味の持てなかった僕が、僕に興味を失くした婚約者のことを気になり始めた。
そして、一緒に過ごすうちに、アニエスのことしか見えなくなっていた。
コロコロとよく変わるその表情。
本人は、貴族令嬢らしく変えてないつもりなのだろうが、ずっと一緒にいた僕には手に取るように分かった。
誰からも愛される、身分で決して人を見ない性格。
大切な人のためなら、無茶なことでもやろうとする無鉄砲さ。
どれもが僕の心をとらえて離さない。
だから、彼女の侍従であるカイのデートの日、僕はアニエスに贈るプレゼントをポケットに忍ばしていた。
僕の瞳の色である、サファイアの石の付いた指輪。
公爵令嬢であり、王太子の婚約者であるアニエスには、大きな石をと思ったのだが、セリオから小さめの、普段使い出来るようなデザインのものをとアドバイスを受けたのだ。
確かに大きな石のついた指輪は、夜会などでないと付けないだろう。
特にアニエスは、あまりそういうものを好まない。
最近、平民の間で、恋人に指輪を贈って結婚を願うというのが、流行っているのだそうだ。
セリオが何故それを、僕に教えてくれたのかはわからない。
だけど僕は、セリオのアドバイスに従うことにした。
婚約者として結婚前にプロポーズするつもりではあるが、学生である今、恋人としてアニエスに結婚を申し込みたい。
そう思ったのだ。
だから、デートの最後に水門へと誘った。
水門の内部は、一般の人間は立ち入りが出来ない。
王都を一望出来る水門で、2人きりで美しい景色を見ながら指輪を渡そう。そう決めていた。
それなのに。
まさか、アニエスから指輪を渡されるとは思わなかった。
アニエスは、セリオを知らない。
もしかしたらカイから聞いたのかもしれないが、それでもアニエスが僕に指輪を贈ろうと思ってくれたことが、嬉しくて仕方なかった。
何度も口付けて、真っ赤になったアニエスのことが愛しくて仕方ない。
その赤く染まった細い首筋に、引き寄せられそうになって、僕は慌てて目を逸らした。
先日、レイノルドがあまりに消沈しているので話を聞いたら、婚約者であるファレノプシス嬢の首筋に、自分のものだという痕を付けたら、痕が消えるまで口をきいてもらえなかったのだそうだ。
コイツは何をやっているんだか。
その時はそう思ったが、今ならその気持ちがわかる。
僕のものだという印を付けたい。
彼女を束縛したい。
自分の欲をグッと堪える。
アニエスに口をきいてもらえなかったら、僕は軽く死ねる。
アニエスの髪に顔を埋めながら、僕は大きく息を吐いた。
216
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる