転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな

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困った婚約者

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「ルミィが食べさせてくれるなら、我慢する」

 そう言うクリス様は、本当に困った人だ。
 我慢という時点で、絶対納得していない。

 だけど、困った婚約者様には、最終手段として泣き落としという手がある。
 私が泣けば、クリス様は折れること間違いなしである。

 まぁ、それは最終手段なわけなので、私は大人しく皿のクッキーを、クリス様の口元へと運んだ。

「クリス様、あーん」

 まさか、そう言われるとは思っていなかったのだろう。
 傾国の美女ならぬ美青年は、その顔を赤く染めた。

 まさしく、ポッ!と赤くなる、というやつである。

 白皙の美貌を持つクリス様がそんな表情をすると・・・

 居間の隅に控えていた侍女たちが、それこそプシュゥゥゥと音を立てそうな勢いで、真っ赤になっている。レイラ以外。

 レイラは全く、全然、ちっとも、クリス様の美貌に揺らがない。
 照れもしないし、完璧な無表情である。

 公爵家の侍女だから、王太子殿下に無愛想な態度を取ったりはしないけど。

 別にクリス様に媚びる必要性はないので、私も咎めるようなことはない。クリス様も何も言わないし。

 私の差し出したクッキーを、嬉しそうに咀嚼するクリス様。

「美味しいですか?」

「うん!すごく美味しいよ。ルミィは天才だね。お店で売ってるのより、王宮で出されるのより、何よりも美味しい」

「大袈裟です」

「本当だよ。もうこの先、ルミィの作ったお菓子以外、食べられないかも」

 それは、私に毎日お菓子を作れと言ってる?

 いや。それなりに自信があったから、クリス様にあげることにしたんだけど。

 両親や公爵家の使用人、クリス様の評価は、5割増しだと思うから、あんまりアテにならない。

 彼らは誉める以外のことをしない。
たとえ、砂糖と塩を間違えていたとしても、美味しいと食べるだろう。本当、アテにならない。

 とはいえ、貶されるよりは褒められた方が嬉しいものである。

「さすがに毎日は無理ですけど、また今度作りますね。何か、食べたいものがありますか?」

 何でも作れるわけではないけど、それなりに得意ではあるから、希望があるなら聞いてもいいかな、と思う。

「クリス様はナッツとか好きですよね。今度はナッツを使ったパウンドケーキとかはどうですか?」

「作れるの?」

「パウンドケーキは簡単な方なので。日持ちもしますし」

 むしろ翌日とかの方が、しっとりするのよね。
 胡桃とかレーズンで、甘さ控えめとか良いかも。見た目が地味になるから、ドライフルーツも入れようかな。

 クリス様の膝の上で、餌付けをしながら、私は次のお菓子作りに思いを馳せるのだった。
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