悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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公爵令嬢のひとり言③

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 ランス兄様とカイルにお菓子を届ける。

 それはランス兄様が静養を始めてから、ずっと続けた。

 王都から持ち込んだ人気店のお菓子は、日持ちしない物から先に。

 さすがに毎日は公爵領に行けないから、一週間分まとめてジェームズに渡して、毎日枕元に置いてもらうようにした。

 カイルは甘い物が苦手で、漫画ではほとんど口にしてなかったから、一週間毎に少しずつ甘さ控えめなのを部屋のドアノブに届ける。

 いくら使用人として雇っているからって、勝手に部屋に入ったりしないわよ?
 そんなことして嫌われたら、泣くに泣けないじゃない。

 それに、前世がいくら一般市民でも公爵令嬢として生まれ変わったんだもの。
 そのあたりのマナーは身についてるわ。

 ランス兄様とカイルに、今年の入学生の名簿を見ておくように促す。

 だって今年は『ヒロイン』である元平民の男爵令嬢が入学してくるんだもの。

 名簿を見たら、やっぱりあったわ、名前。

 あれ、乙女ゲームの時は任意で名前を付けれたけど、漫画になったから名前は決まっているのよ。

 アナ・オフリー。
オフリー男爵家の養女になった元平民の少女。

 黒髪黒目のヒロインって、何だか新鮮よね。
 乙女ゲームのヒロインって、大体がピンク髪と瞳なんだもの。

 この世界、貴族は金髪や銀髪、青に赤に緑にと、カラフルな髪色ばかり。

 平民は大体が栗色だから、平民でも黒髪黒目のヒロインは目立ってた。

 平民育ちだったせいか、活発で明るい性格。
 言いたいこともはっきり言うから、そこが王子や他の攻略対象の興味を引くのよね。

 だけど私は、このヒロインが嫌いだった。

 普通に考えてみて?
攻略対象って、高位貴族や王族なのよ?

 年齢は十六歳。
当然いるわよね、婚約者。

 フィオレンサ公爵家うちは特殊で、恋愛結婚派というか、まずは好きな相手を連れて来なさいってスタンスだから、私が王子の婚約者を蹴っても何も言わなかった。

 普通ならあり得ないのよ。
高位貴族や王族の婚約って、家と家の契約だって、どの乙女ゲームのラノベでも書いてるんだもの。

 家の発展や利のために、結ばれるものだから。
 うちはその分の利を、私が叩き出したから目を瞑ってくれてるのよ。

 それはともかく、婚約者のいる相手と馴れ馴れしくするオンナに、どう好感を持つというの?

 平民だったから?
分からなくもないけど、男爵家に引き取られた時点で、貴族令嬢なのよ?

 令嬢としての振る舞いやマナーが出来てないの、問題だと思うわ。

 まぁ、私に絡んでこなければどうでもいいけど。

 王子とは婚約してないから、彼を攻略する分には何なら応援するわ。

 もっとも王太子妃になるには、相当教育が大変だと思うけどね。
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