悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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ヒロインは嫌いだけど

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 ルーナが声をかけると、アナ・オフリー男爵令嬢は席を立って小さく会釈をした。

 学園に通うのは貴族ばかりとはいえ、一応は平等をうたっている。

 だって高位貴族が権利を振りかざしたら、下位貴族は学ぶことすらできなくなるから。

 マナーを無視していいわけじゃないけど、下位貴族から高位貴族に話しかけては良くないとかの諸々のしきたりは、学園内のみ問われないことになっている。

「アナ・オフリーと申します」

「ずいぶんと賑やかね。見本となる殿下や公爵令息がアレでは示しがつかないわ」

「・・・窓際の方がよろしければ代わりましょうか?」

 アナはそのまま席を譲ろうとするが、ルーナは首をゆっくりと振った。

「いいえ。私はアナ様の後ろの席につかせていただくわ。ランス兄様、彼女の隣に。カイルは私の隣ね」

 ルーナの指示で、ランスロットはアナの隣に、カイルはルーナの隣に座る。

 ルーナが後ろに座ることにしたのには理由がある。

 前に座ると、アナが後ろから何か嫌がらせを受けていても、気づかない可能性があるからだ。

 その点、後ろならその心配がない。
しかも窓際で、横はランスロットとカイル。

 万全は配置である。

「紹介しますわね。私の従兄で次期フィオレンサ公爵のランスロット。カイルは侍従ですが、ルブラン公爵家に籍を置いております」

「・・・はじめまして。アナ・オフリーと申します」

「よろしく、オフリー嬢。でも珍しいね。ルーナがご令嬢に僕やカイルを紹介するのって」

 ランスロットは、フィオレンサ公爵を継ぐ正当な後継者である。
 少なくとも、ルーナや叔父のフィオレンサ公爵たちはそう思っている。

 だから、現在婚約者のいないランスロットに、むやみにご令嬢を近づけたりしない。

 ルーナたちは、ランスロットが心惹かれた相手と結ばれて欲しいとは思っているが、それが次期公爵夫人として問題のある相手では困る。

 頭ごなしに否定するつもりはないが、あまりに問題があるようなら、否定せざるおえない。

 そう。
今目の前で、殿下をはじめとした攻略対象たちに、ベタベタと触れている偽ヒロインのような相手は、次期公爵夫人として失格なのだ。

 しかし、どういうことだろうか。
ルーナが知っている乙女ゲームの漫画のヒロインは、間違いなく目の前のアナ・オフリーである。

 乙女ゲームの場合、ヒロイン視点のためにハッキリとヒロインの顔が出ない乙女ゲームもあるが、あの乙女ゲームは漫画化されているのだ。

 第一、黒髪とピンク髪の差など一目瞭然だ。

 ルーナは、乙女ゲームのヒロインが嫌いである。

 だが、他にヒロインをやってくれる人間がいるのなら・・・
 聖女は悪役令嬢が手に入れてもいいんじゃないかと思うルーナであった。


 
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