悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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従兄弟

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 ライアンがリリアナに文句を言いに来た日から、数日後。

 リリアナは、従兄弟であるセドリックに呼び出されていた。

 神官長である王弟、その息子であるセドリックは青い髪に青い瞳の、優しい風貌の青年だ。

 リリアナは兄であるライアンとも、従兄弟であるセドリックとも、幼い頃から仲良く過ごしていた、と自分では思っている。

 五歳の時にランスロットと出会うまでは、少々我儘だったと思うが、ランスロットに恋をして以来は、彼に嫌われることがないように子供なりに努力してきたつもりだ。

 幸いにも王族であるリリアナは、幼い頃から王族としての行儀作法の教育も始まっていたので、兄や従兄弟に嫌われる行動というのはなかったはずだ。

 ライアンもセドリックも、優秀で優しい、自慢の兄であり従兄弟だった。

 少なくとも学園に入学するまでは。

 あんな男爵令嬢にのぼせ上がるとは思いもしなかった。

 同じ男爵令嬢でも、貴族として『キチン』としているご令嬢はたくさんいる。

 下位貴族は、高位貴族や王族のように家庭教師を雇えるわけではなく、学園に入ってから学ぶ貴族が多い。

 それでも本人の努力や夫人の教育で、高位貴族に見劣りしないご令嬢も多くいる。

 それなのによりにもよって、平民と変わりない、いや平民でももう少しまともだろうと思えるご令嬢を選ぶとは。

 リリアナは、目の前の従兄弟に目を向けた。

 王弟である叔父は、早くから王位継承権を放棄しているが、セドリックはまだ継承権をもっている。

 ライアンが立太子しなくてもリリアナがいるため、セドリックが立太子する可能性はほとんどないし、セドリック自身も神官の道を進むつもりらしいが、王家の血筋に万が一があった時のための保険だ。

 セドリックが放棄するのは王太子に子が授かってからになる。

「それで、私にお話とは何かしら?」

「あ、あの・・・出来ればふたりきりで・・・」

 戸惑ったように、セドリックは視線をリリアナの隣に向ける。

 そこには、ルーナとアナ、少し離れた位置にランスロットとカイルがいたからだ。

 相談があるとリリアナを呼び出したセドリックは、リリアナだけが来るものだと思っていた。

 いや。護衛である専属侍女は付いてくるだろうが、まさか他家のご令嬢や子息までが来るとは思っていなかったのだ。

「あら?ふたりきりだなんて、婚約者のアマリア様に失礼になってしまいますわ。いくら従兄弟といえど」

 アマリアとはセドリックの婚約者で、ジーン伯爵家の令嬢だ。

 稀有な治癒魔法使いであるアマリアは、それ故にセドリックの婚約者となっていた。

 リリアナの、綺麗な眉をひそめるようにしながらの言葉に、セドリックは俯いた。
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