悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

乙女ゲームの分岐点

　ルーナ、正確には月子の記憶の中にある乙女ゲームには、いくつかイベントがある。

　攻略対象全員と出会う、入学式の出会いイベント。

　そして分岐ルートの魔法学ペアイベント。

　この分岐イベント後は、それぞれの攻略対象別のイベントがあり、最終的に卒業パーティーでダンスを申し込まれればハッピーエンドとなる。

　ヒロインが選んだパートナーが、ライアンと騎士団長子息のダグラスの場合は、魔獣討伐イベントとなる。

　魔法学の郊外実習中に魔獣が現れる。

　乙女ゲーム版では攻略対象に婚約者はいないから、ヒロインを邪魔と思ったモブのご令嬢が起こす『事故』で魔獣が呼び寄せられるのである。

　それを聖魔法使いのヒロインが止めようと、火魔法使いのライアンやダグラスと協力するのが、ライアンとダグラスルートのイベントだ。

　ちなみに魔獣を止められなかった場合は、騎士団が魔獣を討伐する。

　一応ルートは開かれるが、好感度はあまり上がらずこの後のイベントを相当頑張らないとダンスのパートナーに選ばれない。

　それだけ重要なイベントなのである。

　ちなみに、宰相子息のアレックスと王弟子息のセドリック、公爵子息のランスロットルートの場合は、疫病が発生するイベントだ。

　民に疫病が広がるのを防ぐために、隔離や治療、疫病原因を探究することになる。

　こちらも防げず王都に疫病が広がった場合、神官長が疫病を癒し、宰相達が治療方針などを確立する。

　ここは乙女ゲームの世界ではないし、ライアンとランスロットには婚約者はいないが、後の三人には婚約者がいるため(もっもと二人は子息側の有責で解消されそうだが)乙女ゲーム通りのイベントが起こるとは限らない。

　だが、だから大丈夫だろうなどと安易に考えるほどルーナは呑気ではない。

　ペアという形ではあるが、チームという形態でアナ達のそばにいるようにしようと、ランスロットたちと話し合った。

　建前は、男爵令嬢のシシリーがアナに言いがかりを付けてくるかもなのを助けるため。

　その可能性が多大にあるために、誰ひとり疑わず、ライアン達のそばに付かず離れずいることとなった。

　同時にルーナは、魔獣討伐のための魔道具作成にかかる。

　ライアンやアナ達には魅了を含む魔法防御と物理的攻撃防御の魔道具を渡してあるが、あくまでも人が行う物理攻撃の防御だ。

　その場にルーナが居れば、多分大抵のことは防げると思うが、もしかしたら完膚なきまでにやられるかもしれない。

　ブラック企業の社畜だった月子は、どんな理不尽な命令にも従えるよう、準備は怠らないタイプであった。