悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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公爵令嬢のひとり言18

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 ユリシーナは、私が生まれた時から仕えてくれていた侍女の娘だ。

 将来私の侍女にするべく、幼い頃から伯爵家で一緒に暮らしていた。

 だから私にとっては侍女というよりは姉のような存在で、でもだからこそ私はユリシーナを連れてはいけない。

「ユリシーナ、話があるの」

「ルーナ様・・・お決めになられたのですね」

 ユリシーナはいつも通りの、表情を変えないまま、それでもどこか諦めを含んだ声でそう言った。

「ユリシーナ。気付いてたの」

「私はルーナ様の侍女です。ずっと・・・ルーナ様がお生まれになった時からずっとおそばにおりました。ルーナ様のお考えを全て理解することは私には出来ませんが、何を望まれているのかくらいはわかるつもりです」

 そう。
ユリシーナはずっとそばにいてくれた。

 いつも、誰よりも・・・時に両親よりも私のことを理解してくれた。

「ユリシーナ、私はカイルと一緒に今夜この国を出る。お父様たちとリリアナ様やアナ様たちには手紙を書いた」

「わかりました。明日の朝一番に届くように手配しておきます」

「お願い」

 ユリシーナは私にを言わない。

 年上なこともあるのかもしれないし、主従関係なこともあるのかもしれない。

 きっと、それでも付いて行きたいと思ってくれている。

「私とカイルは、転移魔法で移動することになると思う。この見た目だと目立つから、認識阻害の魔道具も使いながらになる。だから・・・ごめん、連れては行けない」

 それに時々は戻るつもりでいるけど、状況確認や緊急連絡のためにはユリシーナには残っていてもらわなきゃならない。

 フィオレンサ公爵家の使用人たちはみんな優秀だけど、一番信用できる人に後を任せておきたい。

 お父様たちを信じてないわけじゃないけど、どうしても王妃様たちに対して甘いところがある。

 アナ様やリリアナ様、ランス兄様を信じてないわけじゃないけど、彼らは自分に厳しくあろうとするあまりに、私に迷惑がかかると言ってこない場合がある。

 だから。
ユリシーナに任せたい。

 彼女なら、的確な判断をもって私に知らせてくれる。

 もちろん、ユリシーナが無理し過ぎないように、その点はお父様たちにも頼んでおくつもりだけど。

 それに・・・
そろそろ適齢期を迎えるユリシーナには、誰か素敵な人と幸せになって欲しい。

「ルーナ様。どうかご健勝で」

「うん。ありがとう、ユリシーナ。ユリシーナがいてくれたおかげで、私は私らしく生きてこれた。ユリシーナも無理はせずに、体には気をつけてね」

「もったいないお言葉です。後のことはお任せください。ルーナ様・・・どうかお幸せになってくださいね」

 ユリシーナは初めて・・・
侍女になって初めて、にっこりと笑顔でそう言ってくれた。

 ありがとう、ユリシーナ。
ユリシーナがいてくれたから、私は本当に幸せだよ。

 次に会うときは、ユリシーナがまた笑顔だと良いな。
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