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今は傍観者ですもの

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 お父様やお母様、お兄様は「様子を見てから」というわたくしの願いを聞いて下さいました。

 でも、エリック殿下との婚約破棄のための準備は急ぐそうです。

 お祖父様、つまりお母様のお父様に連絡して、ローゼンタール王国でお父様に爵位が与えられることになりました。

 お父様はローゼンタール王国イングリス公爵となります。

 ただお母様がローゼンタール王国の王女なので、わたくしは公爵令嬢であり王孫という身分となります。

 それから、お兄様の婚約者であるキャスリーン様のお父様、宰相であるキンブル侯爵の手を借りて、この国での爵位返上の準備も着々と進んでいるそうです。

 お母様がおっしゃった通りに、キンブル侯爵も一家でローゼンタール王国に移住されるそうです。

 良かったですわ。
お兄様が婚約者と離れ離れになったら大変ですもの。

 でも、セオドア王国は大丈夫なのかしら?

 宰相様に、騎士団の団長、文官を纏める文官長、そしてイングリス筆頭公爵家。

 それだけの人間がいなくなって、国は機能するのかしら?

 そう思ってお母様にお伺いしたら、満面の笑みで「王家がどうにかするでしょ。そんなこと気にしなくて良いのよ」と言われました。

 お母様がそうおっしゃるなら、きっと大丈夫なのでしょう。

 そして、わたくしは現在、カフェテラスで仲良くお茶を飲むエリック殿下とユリア様のお姿を、離れた席から見ています。

 お兄様はユリア様をすぐに見つけて、エリック殿下と引き合わせたそうです。

 表向きは、キャスリーン様の下のお兄様の部下の方の紹介という形で。

 お母様の指示らしいです。
イングリス公爵家が引き合わせたと知られないように、ですって。

 確かに、わたくしとエリック殿下は王命で婚約しています。

 婚約解消のために、エリック殿下に女性を近づけたと知られたら、解消してもらえないかもしれませんわ。

 でも、なんだか話が弾んでいる様子のお二人を見ても、何の感情もわきません。

 わたくしも王命だからやむ得ず、婚約したのですわね。

 貴族の結婚に恋情は必要ないとはいえ、お父様とお母様を見て育ったわたくしは恋愛結婚というものに憧れを抱いています。

 エリック殿下とユリア様は、やっぱり運命の相手なのでしょう。

 わたくし、あの夢を見て婚約を解消できるようにお願いしたこと、心から良かったと思います。

 きっとあの夢は、政治的ものが絡んでるとはいえ、思い合う二人を引き裂くべきではないという神様からの警告だったのでしょう。

 わたくしはとても清々しい気持ちで、お茶をいただきました。

 この先、お二人は色々と大変でしょうけど、お互い思い合う気持ちがあればきっと乗り越えられますわ。



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