10 / 122
巻き戻りの代償〜イングリス公爵夫人テレサ視点〜
しおりを挟む
「とにかく、アリスティアには巻き戻りだと気付かれないように、進めましょう。あれは夢だったと思わせるようにね」
旦那様にライアン、この部屋にいる使用人たちの顔をぐるりと見渡す。
我がイングリス公爵家の使用人は、信用に足る人間ばかり。しかも有能。
だからこそ、大切なお姫様を任せられた。
でも学園の中にまで付いていくことは出来なかった。
同い年の護衛を付けるべきだったわ。
まさか学園のパーティーで、私の大切なお姫様が殺されるだなんて思わなかった。
アリスティアが聖なる乙女でなかったら・・・
私たちは、大切な大切なあの子を失っていたわ。
他国でよく聞く聖女と、ローゼンタール王国の聖なる乙女は全くの別物。
アリスティア自身は結界も張れないし、傷を癒すことも出来ない。
あの子にできるのは、精霊たちにお願いして天候を操ったり、土壌を豊かにすること。
精霊の力を借りれば、国を滅ぼすことも豊かにすることも出来る。
聖なる乙女は、精霊に愛された子。
今回の巻き戻りは、精霊があの子を助けるために行ったのよ。
その代償として、あの子は大切にしていた感情を失った。
あの王子エリックを愛していたという感情を。
アリスティアは、婚約者のことを本当に愛していた。
子供の頃は好きという感情だったのが、二人で市井に出かけた時から、それが愛情に変わっていったのだと思う。
愛していたから・・・
あの王子が男爵令嬢にのぼせ上がっていたのを我慢した。
王命で結ばれた婚約が解消されないと信じていたから。
学園を卒業して婚姻すれば、あの男爵令嬢と出会う前の二人に戻れると、あの子は信じようとしていた。
それをあの王子は・・・
だから精霊は、王子に対する感情を代償に時を戻した。
戻った時が、あの市井に出かけた日の直後だったのは、あの日からアリスティアの感情が変化したから。
あの日がきっかけだったのよ。
塗料がついた髪で、それでも嬉しそうに髪飾りを持ったあの子の笑顔が忘れられない。
その感情を代償にすることで、精霊は時を巻き戻してアリスティアの命を繋いだ。
精霊から聞かされていなければ、時が巻き戻ってるだなんて気付かなかった。
そうしたらまた、同じ結末を迎えてしまっていたかもしれない。
ローゼンタールの血を引いていて良かったと、こんなに思ったことはないわ。
わざわざあの王家に手を下さなくても、精霊に愛されたアリスティアがこの国からいなくなれば、この国は間違いなく衰退して行くでしょう。
今度は間違えない。
大切なお姫様を必ず幸せにしてみせるわ。
旦那様にライアン、この部屋にいる使用人たちの顔をぐるりと見渡す。
我がイングリス公爵家の使用人は、信用に足る人間ばかり。しかも有能。
だからこそ、大切なお姫様を任せられた。
でも学園の中にまで付いていくことは出来なかった。
同い年の護衛を付けるべきだったわ。
まさか学園のパーティーで、私の大切なお姫様が殺されるだなんて思わなかった。
アリスティアが聖なる乙女でなかったら・・・
私たちは、大切な大切なあの子を失っていたわ。
他国でよく聞く聖女と、ローゼンタール王国の聖なる乙女は全くの別物。
アリスティア自身は結界も張れないし、傷を癒すことも出来ない。
あの子にできるのは、精霊たちにお願いして天候を操ったり、土壌を豊かにすること。
精霊の力を借りれば、国を滅ぼすことも豊かにすることも出来る。
聖なる乙女は、精霊に愛された子。
今回の巻き戻りは、精霊があの子を助けるために行ったのよ。
その代償として、あの子は大切にしていた感情を失った。
あの王子エリックを愛していたという感情を。
アリスティアは、婚約者のことを本当に愛していた。
子供の頃は好きという感情だったのが、二人で市井に出かけた時から、それが愛情に変わっていったのだと思う。
愛していたから・・・
あの王子が男爵令嬢にのぼせ上がっていたのを我慢した。
王命で結ばれた婚約が解消されないと信じていたから。
学園を卒業して婚姻すれば、あの男爵令嬢と出会う前の二人に戻れると、あの子は信じようとしていた。
それをあの王子は・・・
だから精霊は、王子に対する感情を代償に時を戻した。
戻った時が、あの市井に出かけた日の直後だったのは、あの日からアリスティアの感情が変化したから。
あの日がきっかけだったのよ。
塗料がついた髪で、それでも嬉しそうに髪飾りを持ったあの子の笑顔が忘れられない。
その感情を代償にすることで、精霊は時を巻き戻してアリスティアの命を繋いだ。
精霊から聞かされていなければ、時が巻き戻ってるだなんて気付かなかった。
そうしたらまた、同じ結末を迎えてしまっていたかもしれない。
ローゼンタールの血を引いていて良かったと、こんなに思ったことはないわ。
わざわざあの王家に手を下さなくても、精霊に愛されたアリスティアがこの国からいなくなれば、この国は間違いなく衰退して行くでしょう。
今度は間違えない。
大切なお姫様を必ず幸せにしてみせるわ。
応援ありがとうございます!
38
お気に入りに追加
3,844
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる