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証拠は十分だ〜ライアン視点〜

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 ニコニコと笑顔を浮かべているアリスに、ホッと息を吐く。

 離れた席では、僕の大切な妹アリスティアを男女が楽しそうにお茶を飲んでいる。

 アリスは学園に入学してから、時々憂えた表情を浮かべるようになった。

 どうしたのかと聞いても、王太子妃教育と学園の勉強で疲れているだけだと笑う。

 確かに王太子妃教育が大変なのか、最近は殿下とお茶会すら出来ないのだと聞いた。

 だから、アリスの言葉を信じてしまった。

 エリック殿下のことを心から愛していたアリスだから、婚約者と会う時間も取れないことが寂しいのだろうと。

 だが、違った。

 殿下はずっとアリスを蔑ろにして、あの男爵令嬢と過ごしていたのだ。

 そして、それを黙認していたアリスを卒業パーティーで処刑したのだ。

 ありもしない罪を被せて。

 許せるものではない。
今すぐにでもあの二人のところへ行って、その首を刎ねてやりたい。

 だが、母上にも父上にも止められた。

 エリック殿下は、アリスティアに何もしていない。

 エリック殿下に危害を加えれば、僕は処罰される。

 婚約者であるキャスリーンにも迷惑がかかるし、何よりアリスが悲しんでしまう。自分のせいだと己を責めるだろう。

 だから駄目だと言われたら、僕も無理を通すことは出来なかった。

 優先すべきなのはアリスティアの心だ。

 あの子が笑っていてくれるなら、王家がどうなろうとこの国がどうなろうと関係ない。

 アリスティアは、エリック殿下のことを本当に愛していたのだと思う。

 だからこそ精霊は、アリスティアのエリック殿下への気持ちを代償にしたのだ。

 僕には、アリスティアのような精霊の加護はない。

 だからアリスが本当に巻き戻ったのか、それとも夢なのか、そのあたりのことはわからない。

 そんなことはどっちでもかまわない。

 キャスリーンの兄上の手引きがあったとはいえ、今そこで、殿下が婚約者以外の令嬢と仲睦まじくしている。

 それだけで十分だ。

 証拠は手に入れた。これでアリスを悪夢から解き放ってやれる。

 国王陛下は抵抗するだろうが、キャスリーンのお父上も味方だ。

 王太子有責での婚約破棄と、王家に咎を求めない代わりに婚約の白紙撤回。

 どちらを選ぶと交渉すれば良い。

 交渉術に長けたキンブル侯爵から、何度もご指南いただいたんだ。

 必ず、アリスの婚約は白紙撤回させる。

 あんなのと婚約していたという『汚れ』なんか、アリスの中から全て消してやる。

 ああ。
感謝しよう。

 おかげでアリスティアの中から、殿下への愛情は全て消えた。

 アリスティアを手にかけたことは絶対に殺しても殺し足りないほど許せないが、その点だけは感謝してやる。
 






 
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