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あの頃と違う

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 わたくしとジーク様の婚約披露パーティーが開かれるそうです。

 当然ですわね。
ジーク様は、ローゼンタール王国王太子殿下。

 国内外に、婚約を知らせておく必要性があります。

 だって他国の王族からも、婚約の打診があるんですもの。

 ジーク様は、とてもとても素敵な方ですから、打診があるのは当たり前なのですけど、その、ジーク様に相応しい方に婚約の打診をされて、もしジーク様のお心が揺れるようなことになったら・・・

 そう不安を漏らしたら、お兄様がそれを絶対にジーク様にお伝えしては駄目だと注意されましたわ。

 そうですわよね。
そんなことを考えてると知られたら、嫌われてしまうかもしれません。

「いや、嫌うというか、ジークハルトの我慢の糸が切れる。絶対に我慢できなくて押し倒・・・モニョモニョ・・・」

「?」

 お兄様が何かブツブツと言われていますけど、よく聞こえませんわ。

「と、とにかく、婚約披露パーティーに国内外の王族や貴族を集めるから。ああ。セオドア王国からは王太子とその婚約者を呼ぶ」

「・・・は、はい」

 セオドア王国王太子殿下。
婚約者ということは、ユリア様とご一緒に来られるていうことですわね。

 とても不思議な気持ちです。

 先ほどジーク様が他の王女殿下に求愛されたらと考えただけで、ものすごく不安でジーク様を奪われたくないと思いましたのに、わたくしエリック殿下がユリア様と親しくされていても、少しも嫌だと思いませんでしたわ。

 生まれた時からの婚約者だったからでしょうか。
 エリック殿下に対して、ジーク様を思うような・・・恋という気持ちを抱いたことはありません。

 兄妹とも違いますわね。
お兄様相手のような、家族愛もありません。

 そうですね・・・
あくまでも王太子殿下と、臣下。それだけだった気がします。

 王妃様に、ずっと「エリックを支えるのが役目」「エリックの手を煩わせてはいけない」「エリックの言うことが全て。従いなさい」と言われ続けていたからでしょうか。

 自由に過ごす王太子殿下の公務を支えるのが、セオドアでのわたくしの役目でした。

 わたくしは、王太子妃という名の、ただの臣下。

 そういえば、まだ幼い頃に熱を出して王宮での王子妃教育をお休みしたことがありましたけど、三日のお休みの後に王宮に参りましたら「たかが熱くらいで、休むなんて。エリックの婚約者としての自覚が足りない」と王妃様に叱責されました。

 王宮での出来事は、一切イングリス公爵家はもちろん誰にも漏らすなと言われていましたから、お母様にもお話していませんけど、あの時は悲しくて夜に一人で泣いてしまいましたわ。
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