決めたのはあなたでしょう?

みおな

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強く優しく美しい姿

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「私は誰かに暗殺されたりしないわ」

 突然、扉が開いてその凛とした声が響きました。

「マリンティア様!」

「精霊王様。ご無礼な振る舞い、お許しくださいませ」

「別に構わない。どうもこの王宮には、ノックをするという習慣はないようだからな。それに扉の前で立ち聞きするのも疲れるだろう」

「・・・申し訳ございません」

 どうやら、マリンティア様は扉の前で私たちの話を聞かれていたようです。

 王宮の部屋ですが、防音魔法を施さない限り、中の音は多少は聞こえます。

 中で何かあった場合、聞こえないのでは護衛できませんから、どこの王宮でも同じようなものです。

「マリンティア様・・・」

「ごめんなさいね?アリス。優しい貴女は、私を気遣ってくれたのね。ジュリアンお兄様が慌てたように精霊王様のお部屋に向かうのを見たの。もしかしたら、貴女に何かあったのかもと思って、後を追いかけたのよ」

 マリンティア様にはアエラスくんの姿は見えませんから、突然慌てて部屋を出ていったように見えたのかもしれません。

「マリンティア」

「ジュリアンお兄様。私、知っていましたわ。お兄様がシャルロット様のことを、とてもとても愛していらっしゃること」

「え?」

 驚いたように、マリンティア様を見つめられる王太子殿下。
 私も驚き、マリンティア様を見つめると、マリンティア様は苦笑いを浮かべられました。

「幼い頃から婚約者だったのでしょう?ケルヴィンお兄様はシャルロット様のことはご存知でしたわ。どうして亡くなられてしまったのかも、どうしてジュリアンお兄様が自国ではなく他国の我が国の学園に通われたのかも」

 ジュリアン王太子殿下は、レンブラント王国の学園に通われたのですね。

 多分ですが、最愛の婚約者を害した自国の貴族と一緒に過ごすことが、その時の殿下には難しかったのかもしれません。

「ケルヴィンお兄様に言われましたわ。シャルロット様のことを含めて、全て受け入れられないのなら、ジュリアンお兄様のことは諦めろ、と。私、ずっと迷っていました」

 そこまでおっしゃられて、マリンティア様は目を閉じて、ゆっくりと息を吐かれます。

 次に目を開けられた時、そのサファイア色の瞳には、強い光が宿っている気がしました。

「誤解なさらないで。私は、シャルロット様のことを愛していらっしゃるジュリアンお兄様のことを好きなのです。だから、受け入れられないという選択肢に悩んだわけではありません。ただ、お兄様に・・・政略結婚といえど、傷の癒えていないお兄様に申し込んで良いのか迷っていたのですわ」

「マリンティア」

「でも、お兄様が私を、いえ私なら信用できるとおっしゃるのなら、もう迷いません。お兄様・・・いえ、ジュリアン王太子殿下。どうか、私マリンティア・レンブラントと婚約して下さいませ」
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