婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな

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第3章

告白2

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「僕は君が好きなんだ。君以外と婚約すらしたくない」

 頭の中を、ハルトナイツの言葉が通り過ぎていく。
 君が好きなんだ?
誰が、誰を?

 私がキョトンとした顔を、よほどしていたのだろう。
 ハルトナイツはそっと私の涙を拭いながら、苦笑している。

「本当に全く伝わっていなかったのか。これでもずっと、アピールしていたつもりだったんだが」

「え・・・と?」

「やはり、はっきりもう一度言ったほうが良さそうだな。ヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢、僕は君のことが好きだ。もし、僕のことを嫌いでないのなら、僕と結婚を前提に交際して欲しい」

 君のことが好き?君って・・・私?

 嘘・・・本当にハルトナイツが私のことを好きなの?

 アピールしてたって、じゃあ毎日会いに来てたのも、私のことを好きだからなの?
 結婚を前提としてって・・・私とハルトナイツが結婚・・・?

 ボン!と音を立てそうなほど、顔に熱が溜まっていったのが分かる。

 おそらく真っ赤になっているだろう私に、ハルトナイツはどこか嬉しそうに微笑った。

「可愛い」

「は、ハルトナイツ様・・・」

「嬉しい。やっと名前で呼んでくれた。ヴィヴィ嬢、返事を聞いても?」

 思わず名前で呼んでしまったら、ハルトナイツにものすごく嬉しそうにされてしまった。

 こんな些細なことで喜んでくれるの?
名前で呼んだだけなのに。
 本当に、私のことを好きでいてくれてるんだ。

 胸が熱い。
私、ハルトナイツのことは、乙女ゲームの中の攻略対象としてしか見ていないんだと思ってた。

 乙女ゲームの中の攻略対象で、前世の私の推し。
 彼も攻略対象だから、ヒロインに攻略されて彼女を溺愛するんだって、どこか心の中で思ってた。

 だから。だから、もしハルトナイツが私と婚約を言い出したとしても、それは政略結婚を前提としたもので、ヒロインに対する気持ちとは別のものだと思い込もうとしてた。

 そうー
思い込もうとしてた。
 だって、そう思ってないと、胸が痛かったから。

 私・・・
目の前にいるこの人のこと、好きなんだ。
 乙女ゲームの攻略対象とか、前世の推しだとか、そんなの関係なくて、理由なんてわからないけど、目の前のハルトナイツのこと、いつのまにか本当に好きになっていたんだ。

まさか好きな人に好きになってもらえて、その人と婚約できるだなんて思わなかった。

「ヴィヴィ嬢。愛している。どうか僕の妃になって欲しい」

「・・・はい。よろしくお願いします」

 私が頷くと、ハルトナイツはやった!と小さく呟いて、私を抱きしめてきた。

 貴族の、未婚の令嬢としてははしたないことだけど、私はこの幸せが夢でないと実感したくて、アゼルたちがやってくるまで抱きしめられたままでいたのだった。




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