悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな

文字の大きさ
37 / 37

悪役令嬢はヒロインに攻略されています

しおりを挟む
 昨日、無事に学園の卒業式を終えた。

 私より誕生日が半年遅いクリストファー殿下は、先日十五歳の誕生日を迎えられた。

 でも、卒業式はクリス様の姿で出ていた。

 まぁ、いきなりクリストファー殿下の姿で出られても周囲も困るものね。

 入学が同じだったアーロン殿下とイザベリーナも、同じく昨日卒業した。

 そして今日、十三歳になったアーロン殿下は正式に王太子として立太子される。

 これは王家と我がクライスラー公爵家が、何度も話し合って決めたことだ。

 最初は、アーロン殿下から何度も再考するようにと反対意見が上がった。

 でも、クリストファー殿下が譲らなかった。

 十六歳まで表舞台に出ていなかった王子よりも、アーロン殿下の方が相応しい。

 それがクリストファー殿下の意見だ。

 そして、現在のアーロン殿下とイザベリーナを見て、国王陛下も王妃様も、私のお父様お母様もクリストファー殿下に同意した。

 いや。本当あの、婚約者の妹とキャッキャッウフフして、挙句にパーティーで婚約破棄を叫んだ王子とは思えない。

 クリストファー殿下の呪いは、無事に十五歳を迎えられたことで、解けたのだと思う。

 元正妃様の国とは国交がないため、術者に本当に呪い返しが起きたのかどうかもわからない。

 ただ、別に呪い返しが起きていようと起きていなかろうと、クリストファー殿下が普通に生きられるなら、それで良いと思う。

 私に転生チートなるものがあれば、もっと早く呪いを解いてあげることができたかもしれないし、その国に仕返しすることもできたかもしれない。

 でもないものねだりをしたところで、私にそんな能力はないし、私たちには呪いが解けるまでの時間が必要だったのだと思う。

「エリザベート!」

 ドレス姿ではなく、式典用の礼服姿のクリストファー殿下が、私に駆け寄るとギュッと抱きしめてきた。

「クリストファー殿下。廊下ではおやめください」

「エリザベートが冷たい」

「いや、周囲の目を気にしてください。今日はアーロン殿下の大切な日なんですから」

 男の姿に戻ったクリストファー殿下は、ちょっと拗ねた顔をしたあと、私の頬にチュッとキスをした。

「殿下っ!」

「殿下って呼ぶからだよ。クリスって呼んでって約束したでしょ」

 クスクスと笑うクリストファー殿下は、全く反省していない。

「そろそろ始まるから、迎えに来たんだよ、婚約者殿」

「本当に後悔しないんですか?」

「もちろん。エリザベートが隣にいてくれるなら、他には何も望まないよ。あの日アーロンが婚約破棄を宣言してくれて本当に良かった」

 あの婚約破棄はこちらが誘導したようなものだけど、良かったと言われて喜んで良いのだろうか。

 まぁ、好きな相手と婚約し直せたのだから、良かったというべきなのかも。

 アーロン殿下の立太子を以て、クリストファー殿下は王籍から抜けられることになった。

 自分がいることで、アーロン殿下の王太子の座が揺らぐことを危惧されてのことだ。

 イザベリーナが嫁ぐこともあって、私がクライスラー公爵家を継ぐことになっていたので、殿下・・・クリス様にはクライスラー公爵家に婿入りしてもらうことになった。

 結婚式は、アーロン王太子殿下の地盤が落ち着いてからということで、最低でも一年は待つことになっているけど、クリス様は公爵家で暮らすことが決まっている。

 あのゲームの中で、私は悪役令嬢と呼ばれ、クリストファー殿下はモブでしかなかった。

 それなのに現実世界では、ヒロインの姿をしたモブ王子が悪役令嬢を攻略してしまった。

「行きましょうか、未来の旦那様」

「了解。未来の奥様」

 私たちはそう言うと、お互い顔を見合わせて笑った。

 この日。

 アーロン・ヴァルフリーデ第二王子殿下の立太子が宣言され、第一王子であったクリストファーは王籍から抜けクライスラー公爵家にいずれ婿入りすることが公表された。

 透き通った青空の、晴れた日のことである。



***end***






 
しおりを挟む
感想 17

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(17件)

ぱら
2023.05.09 ぱら

完結おめでとう㊗御座います!!

皆がハッピーエンドで良かったです。
(꒪ˊ꒳ˋ꒪)ꕤ*.゚

それにしても兄弟、姉妹でそれぞれ結婚してるから王様になっても頭上がらなさそう(o´罒`o)イシシ

2023.05.09 みおな

読んでいただきありがとうございます😊
みんな比較的幼いうちだったので、矯正が出来たようで何よりです。
頭は・・・上がらないでしょうね。臣下でも。
困ったら、公爵家に駆け込みそう。

解除
ぱら
2023.04.30 ぱら

お清めの塩ふったら呪い解けないかなぁ?
(๑°ˊ ᐞ ก̀)…無理?

2023.04.30 みおな

それって、日本人的発想ってやつですよね。お清め塩か。

解除
ぱら
2023.04.27 ぱら

親子揃ってやらかしたんだから、何も言えないよね?ε-(´^`*)

ひたすら謝るしかないなぁ(´д`)

2023.04.27 みおな

幸いにも女性バージョンも、一応だけど殿下バージョンも嫌われてないのが救いかな。

解除

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。