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悪役令嬢はヒロインに攻略されています
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昨日、無事に学園の卒業式を終えた。
私より誕生日が半年遅いクリストファー殿下は、先日十五歳の誕生日を迎えられた。
でも、卒業式はクリス様の姿で出ていた。
まぁ、いきなりクリストファー殿下の姿で出られても周囲も困るものね。
入学が同じだったアーロン殿下とイザベリーナも、同じく昨日卒業した。
そして今日、十三歳になったアーロン殿下は正式に王太子として立太子される。
これは王家と我がクライスラー公爵家が、何度も話し合って決めたことだ。
最初は、アーロン殿下から何度も再考するようにと反対意見が上がった。
でも、クリストファー殿下が譲らなかった。
十六歳まで表舞台に出ていなかった王子よりも、アーロン殿下の方が相応しい。
それがクリストファー殿下の意見だ。
そして、現在のアーロン殿下とイザベリーナを見て、国王陛下も王妃様も、私のお父様お母様もクリストファー殿下に同意した。
いや。本当あの、婚約者の妹とキャッキャッウフフして、挙句にパーティーで婚約破棄を叫んだ王子とは思えない。
クリストファー殿下の呪いは、無事に十五歳を迎えられたことで、解けたのだと思う。
元正妃様の国とは国交がないため、術者に本当に呪い返しが起きたのかどうかもわからない。
ただ、別に呪い返しが起きていようと起きていなかろうと、クリストファー殿下が普通に生きられるなら、それで良いと思う。
私に転生チートなるものがあれば、もっと早く呪いを解いてあげることができたかもしれないし、その国に仕返しすることもできたかもしれない。
でもないものねだりをしたところで、私にそんな能力はないし、私たちには呪いが解けるまでの時間が必要だったのだと思う。
「エリザベート!」
ドレス姿ではなく、式典用の礼服姿のクリストファー殿下が、私に駆け寄るとギュッと抱きしめてきた。
「クリストファー殿下。廊下ではおやめください」
「エリザベートが冷たい」
「いや、周囲の目を気にしてください。今日はアーロン殿下の大切な日なんですから」
男の姿に戻ったクリストファー殿下は、ちょっと拗ねた顔をしたあと、私の頬にチュッとキスをした。
「殿下っ!」
「殿下って呼ぶからだよ。クリスって呼んでって約束したでしょ」
クスクスと笑うクリストファー殿下は、全く反省していない。
「そろそろ始まるから、迎えに来たんだよ、婚約者殿」
「本当に後悔しないんですか?」
「もちろん。エリザベートが隣にいてくれるなら、他には何も望まないよ。あの日アーロンが婚約破棄を宣言してくれて本当に良かった」
あの婚約破棄はこちらが誘導したようなものだけど、良かったと言われて喜んで良いのだろうか。
まぁ、お互い好きな相手と婚約し直せたのだから、良かったというべきなのかも。
アーロン殿下の立太子を以て、クリストファー殿下は王籍から抜けられることになった。
自分がいることで、アーロン殿下の王太子の座が揺らぐことを危惧されてのことだ。
イザベリーナが嫁ぐこともあって、私がクライスラー公爵家を継ぐことになっていたので、殿下・・・クリス様にはクライスラー公爵家に婿入りしてもらうことになった。
結婚式は、アーロン王太子殿下の地盤が落ち着いてからということで、最低でも一年は待つことになっているけど、クリス様は公爵家で暮らすことが決まっている。
あのゲームの中で、私は悪役令嬢と呼ばれ、クリストファー殿下はモブでしかなかった。
それなのに現実世界では、ヒロインの姿をしたモブ王子が悪役令嬢を攻略してしまった。
「行きましょうか、未来の旦那様」
「了解。未来の奥様」
私たちはそう言うと、お互い顔を見合わせて笑った。
この日。
アーロン・ヴァルフリーデ第二王子殿下の立太子が宣言され、第一王子であったクリストファーは王籍から抜けクライスラー公爵家にいずれ婿入りすることが公表された。
透き通った青空の、晴れた日のことである。
***end***
私より誕生日が半年遅いクリストファー殿下は、先日十五歳の誕生日を迎えられた。
でも、卒業式はクリス様の姿で出ていた。
まぁ、いきなりクリストファー殿下の姿で出られても周囲も困るものね。
入学が同じだったアーロン殿下とイザベリーナも、同じく昨日卒業した。
そして今日、十三歳になったアーロン殿下は正式に王太子として立太子される。
これは王家と我がクライスラー公爵家が、何度も話し合って決めたことだ。
最初は、アーロン殿下から何度も再考するようにと反対意見が上がった。
でも、クリストファー殿下が譲らなかった。
十六歳まで表舞台に出ていなかった王子よりも、アーロン殿下の方が相応しい。
それがクリストファー殿下の意見だ。
そして、現在のアーロン殿下とイザベリーナを見て、国王陛下も王妃様も、私のお父様お母様もクリストファー殿下に同意した。
いや。本当あの、婚約者の妹とキャッキャッウフフして、挙句にパーティーで婚約破棄を叫んだ王子とは思えない。
クリストファー殿下の呪いは、無事に十五歳を迎えられたことで、解けたのだと思う。
元正妃様の国とは国交がないため、術者に本当に呪い返しが起きたのかどうかもわからない。
ただ、別に呪い返しが起きていようと起きていなかろうと、クリストファー殿下が普通に生きられるなら、それで良いと思う。
私に転生チートなるものがあれば、もっと早く呪いを解いてあげることができたかもしれないし、その国に仕返しすることもできたかもしれない。
でもないものねだりをしたところで、私にそんな能力はないし、私たちには呪いが解けるまでの時間が必要だったのだと思う。
「エリザベート!」
ドレス姿ではなく、式典用の礼服姿のクリストファー殿下が、私に駆け寄るとギュッと抱きしめてきた。
「クリストファー殿下。廊下ではおやめください」
「エリザベートが冷たい」
「いや、周囲の目を気にしてください。今日はアーロン殿下の大切な日なんですから」
男の姿に戻ったクリストファー殿下は、ちょっと拗ねた顔をしたあと、私の頬にチュッとキスをした。
「殿下っ!」
「殿下って呼ぶからだよ。クリスって呼んでって約束したでしょ」
クスクスと笑うクリストファー殿下は、全く反省していない。
「そろそろ始まるから、迎えに来たんだよ、婚約者殿」
「本当に後悔しないんですか?」
「もちろん。エリザベートが隣にいてくれるなら、他には何も望まないよ。あの日アーロンが婚約破棄を宣言してくれて本当に良かった」
あの婚約破棄はこちらが誘導したようなものだけど、良かったと言われて喜んで良いのだろうか。
まぁ、お互い好きな相手と婚約し直せたのだから、良かったというべきなのかも。
アーロン殿下の立太子を以て、クリストファー殿下は王籍から抜けられることになった。
自分がいることで、アーロン殿下の王太子の座が揺らぐことを危惧されてのことだ。
イザベリーナが嫁ぐこともあって、私がクライスラー公爵家を継ぐことになっていたので、殿下・・・クリス様にはクライスラー公爵家に婿入りしてもらうことになった。
結婚式は、アーロン王太子殿下の地盤が落ち着いてからということで、最低でも一年は待つことになっているけど、クリス様は公爵家で暮らすことが決まっている。
あのゲームの中で、私は悪役令嬢と呼ばれ、クリストファー殿下はモブでしかなかった。
それなのに現実世界では、ヒロインの姿をしたモブ王子が悪役令嬢を攻略してしまった。
「行きましょうか、未来の旦那様」
「了解。未来の奥様」
私たちはそう言うと、お互い顔を見合わせて笑った。
この日。
アーロン・ヴァルフリーデ第二王子殿下の立太子が宣言され、第一王子であったクリストファーは王籍から抜けクライスラー公爵家にいずれ婿入りすることが公表された。
透き通った青空の、晴れた日のことである。
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