悪役令嬢?寝言は寝て言え〜全員揃って一昨日来やがれ〜

みおな

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とりあえず平穏な日々

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 物語に強制力がある無しはともかくとして。

 仮初の平穏な日々が訪れた。

 ジェラートは、婚約者候補のマルチナとカリーナと交流しながら王太子としての勉強。

 アランお兄様は、婚約者のエマ・グレイシア侯爵令嬢と親交を深め中。

 シェリルことみくりちゃんは、私の侍女をしながら、この世界での貴族としての生き方を勉強中。

 スレッガー・カシアス侯爵令息と、アルフ・キッシンガム侯爵令息は、現在ラズウェル公爵閣下、つまり伯父様のところで矯正教育中。

 そして、似非ヒロインのアリー・アンナ男爵令嬢は、我がフロライン公爵家の暗部預かりになっている。

 フロライン公爵家の暗部。

 嫁に行く私は関わることを禁じられているけど、嫡男であるお兄様はいずれそれらを率いることになる、らしい。

 細かいことは分からないけど、まぁよくラノベとかに出てくる王家の影とかそういうものの公爵家版みたいなものかな、と想像している。

 だって、関わらせてくれないんだもの。真実は分かんないわよ。

 ただ、まぁ、とりあえずアリーは死んじゃったとかじゃないことだけはわかった。

 実の父親のアンナ男爵には悪いけど、夫と別の女性との子供を引き取って育てようとした夫人は相当アリーのことで疲弊していたみたいだし、これ以上アリーの罪を彼らに知らせるのはさすがに不憫かな。

 私が知らない部分なので、今後アリーと会うことはないと思うけど、まぁちょっとは真っ当に生きて欲しいと思う。

 で。当の私はというと・・・

「イアン様、どうですか?お口にあいますか?」

 自分で作ったクッキーを、婚約者であるイアン様に食べてもらいながら、その反応にドキドキしていた。

 前世で二十三歳まで生きたけど、お菓子作りなんて可愛い女子のようなことをしたことは一度もなかった。

 だから、前世から数えても初めてのお菓子作り。

 なんで、こんなことになったかというと、みくりちゃん・・・シェリルが言った何気ないひと言だった。

「この世界にはバレンタインってないよね。貴族の人ってお料理もしないし。好きな人の手作りって欲しくないのかな」

 シェリルは、普段はちゃんと私の侍女として敬語も使うし、最近はお母様に色々と教わっているみたいで、貴族らしくなって来てる。

 でも時々、私と二人きりの時にみくりちゃんとしての発言をすることがある。

 それも、最初の頃に比べたら減って来てるけど。

 私がアレーシアになって来てるように、みくりちゃんもシェリルになって来てるのかもしれない。

 ちょっと寂しい気もするけど、これからシェリルがこの世界で生きていくためには、その方がいいのかもしれない。
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