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10歳

64ページ:伯爵家の決断

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「マズル兄さん、もうやめてくれ!」

「うるさい!うるさい!!元々はお前が、つまらぬ失敗などするからこんなことになったのだ!そんな小娘などに負けて悔しくないのか!!見ろ!俺は王太子すら操れるのだぞ?あの時、俺がそばにいたなら、王太子もその小娘も操ってやったのに!!」

 マモンの切実な願いに返ってきたのは、醜い、本当に醜い答えだった。

 彼は、本当にアル兄様と同い年なんだろうか。
 言ってることは、13歳のマモンや10歳のスコンブと変わらない。

 自信過剰にも程がある。
確かに、アル兄様を操れるほどの支配の魔法が使えるということは、あのブラッド伯爵よりも力は上ということかもしれない。

 上位精霊と人間であるアル兄様を比べるのは変なことだけど。

 あ。しまった。
ノワールに言われてたんだった。人にかけられた魔法を解けるのは、人間だけだって。

 じゃあ、アル兄様にかかってる支配の魔法は私が解かないと。

「ノワール。アル兄様にかかってる魔法、私でないと解けないんじゃ・・・」

『マスター、ご安心ください。あの者にかけられているのは呪法ではありません。あれは呪具を埋め込まれているのです。その呪具に込められた支配によりあのような行動だったのでしょう』

「それって、アル兄様は大丈夫なの?」

『無魔法のアポステリオリと、聖魔法のセイクレッドがいるのです。マスターがお心を乱される必要はありません。彼らも出来ないことは出来ないと言いますよ』

 ノワールの答えに、ホッと息を吐く。
ノワールがそう言うのなら、彼らに任せておいてもいいのだろう。

 しかし、呪具か。
そんなものが何故、マズルの手に?
 自分がいれば3年前の時、私も操れたと言っていた。

「マズル。どこから呪具を手に入れたのです?」

「!!」

 マモン相手に喚き散らしていたマズルは、私の問いかけに目を見開いた。

「姫様。呪具とは、一体・・・」

「アル兄様は、埋め込まれた呪具の力で操られているそうです。つまりは、直接魔法をかけられたのとは違うということ。マズル、貴方は先ほど自分がいれば3年前に私も操れたのにと言いましたね?その頃から呪具を所持していたということですか?」

「・・・」

 マズルは答えない。
後ろでブロワー伯爵と、マルクが息を呑んでいるのが分かる。

 人を支配するための道具を、王太子に付けた。それは、完全に国家反逆罪だ。
 未来の国王陛下を支配して、この国を自分の手で好きにしようとしている。そう判断されて当然のことだ。

「国王陛下。マズルを処刑して下さい」

 ブロワー伯爵の声は、震えていたものの、はっきりとした決意を感じさせるものだった。


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