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第40.5話〜作者?視点〜
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「「あー、本当にキモかった」」
ソファーの背もたれにもたれこむようにしながら、双子はピッタリと寄り添い合う。
大きなため息を吐く二人に、侍女は顔色も変えずに淡々と二人の前に香り高い紅茶を差し出した。
「あ。良い香り。カリスタ伯爵家の例のお店のね」
「ああ。そのケーキも新しいお店のやつだよね?」
目の前に並べられるケーキや焼き菓子に、不機嫌だった二人も目を輝かせる。
「はぁ。アルバート様のためとはいえ、あんなキモいの相手に口づけだなんて!」
「アルバート様の影はちゃんと録画してくれたんだよね?」
セインの言葉に、部屋の天井からコツン、と音がした。
「そうよね、アルバート様がそんなミスするわけないわよね。仕方ないわ、現在しかできない仕事だもの」
大切な主人のためとはいえ、ハニートラップを仕掛けなければならなかった二人は、疲れを取るように目の前の甘味を貪った。
カリスタ伯爵家の新たな商会で、取り扱うようになった紅茶と甘味。
甘いもの好きの二人のために、カリスタ伯爵が手配してくれたものだ。
「でもこれで、決定よね?」
「そうだね。終業式で終わりだね」
お互いの額を合わせて、クスクスと笑う。
愚かな王女と侯爵令息から、やっと主人と主人の大切な人を解放できる。
そのために我が身を犠牲にして、あのキモい相手からの口付けを受け入れたのだ。
「あの録画が公開されたら、拒否なんてできないわよね」
「そうだね。僕らは受け身だから、無理矢理だなんて言い訳もできないよね」
「そういえば真実は告げるのかしら?」
「終業式では言わないらしいよ。まぁ、なら不貞ではないとか言われたらたまらないしね」
セイラとセインにとって、主人であるアルバートの願いを叶えることは、当たり前のことだ。
両親を亡くし、親戚から酷い扱いを受けていた双子を救ってくれたアルバート。
そのアルバートが誰よりも想っているカリスタ伯爵令嬢。
その婚約が壊れた時、表面上は王太子として平然としていたアルバートがキツく手のひらを握りしめていたのを双子は見ていた。
王太子という身分上、王女を妻にという臣下がいることもあり、アルバートは自分の恋心を殺した。
だけど、国王陛下たちが密かに影を動かし掴んだカリスタ伯爵令嬢の現在の状況と王女の愚かな所業に、やっとアルバートは本来あるべき姿に戻る決心をしたのだ。
ならば、そのために自分たちが全力で協力するのは当然のこと。
双子にとってクシュリナ王家は、そういう存在だった。
ソファーの背もたれにもたれこむようにしながら、双子はピッタリと寄り添い合う。
大きなため息を吐く二人に、侍女は顔色も変えずに淡々と二人の前に香り高い紅茶を差し出した。
「あ。良い香り。カリスタ伯爵家の例のお店のね」
「ああ。そのケーキも新しいお店のやつだよね?」
目の前に並べられるケーキや焼き菓子に、不機嫌だった二人も目を輝かせる。
「はぁ。アルバート様のためとはいえ、あんなキモいの相手に口づけだなんて!」
「アルバート様の影はちゃんと録画してくれたんだよね?」
セインの言葉に、部屋の天井からコツン、と音がした。
「そうよね、アルバート様がそんなミスするわけないわよね。仕方ないわ、現在しかできない仕事だもの」
大切な主人のためとはいえ、ハニートラップを仕掛けなければならなかった二人は、疲れを取るように目の前の甘味を貪った。
カリスタ伯爵家の新たな商会で、取り扱うようになった紅茶と甘味。
甘いもの好きの二人のために、カリスタ伯爵が手配してくれたものだ。
「でもこれで、決定よね?」
「そうだね。終業式で終わりだね」
お互いの額を合わせて、クスクスと笑う。
愚かな王女と侯爵令息から、やっと主人と主人の大切な人を解放できる。
そのために我が身を犠牲にして、あのキモい相手からの口付けを受け入れたのだ。
「あの録画が公開されたら、拒否なんてできないわよね」
「そうだね。僕らは受け身だから、無理矢理だなんて言い訳もできないよね」
「そういえば真実は告げるのかしら?」
「終業式では言わないらしいよ。まぁ、なら不貞ではないとか言われたらたまらないしね」
セイラとセインにとって、主人であるアルバートの願いを叶えることは、当たり前のことだ。
両親を亡くし、親戚から酷い扱いを受けていた双子を救ってくれたアルバート。
そのアルバートが誰よりも想っているカリスタ伯爵令嬢。
その婚約が壊れた時、表面上は王太子として平然としていたアルバートがキツく手のひらを握りしめていたのを双子は見ていた。
王太子という身分上、王女を妻にという臣下がいることもあり、アルバートは自分の恋心を殺した。
だけど、国王陛下たちが密かに影を動かし掴んだカリスタ伯爵令嬢の現在の状況と王女の愚かな所業に、やっとアルバートは本来あるべき姿に戻る決心をしたのだ。
ならば、そのために自分たちが全力で協力するのは当然のこと。
双子にとってクシュリナ王家は、そういう存在だった。
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