はっきり言ってカケラも興味はございません

第六十三話

　アルバート様と誰かが恋仲。

　そばにいないと、こんな不安もあるのですね。

　もちろん、私を想ってくださるアルバート様の気持ちは疑いませんけど、信じていても不安は感じるものです。

　交際しているというのは嘘でしょう。

　もし本当に他の方に心惹かれたのなら、アルバート様は私と婚約などしなかったでしょうし、王太子として国の利益を求めるのなら、その方への想いは断ち切ると思います。

　アルバート様は、誠実な方です。

　人を好きになる気持ちは、どうにも出来ないものですが、それを理性で制御することは大切なことですから。

　だから、もしその方のことをアルバート様がお好きだというのが本当だとしても、交際されているというのは嘘だと思います。

　私を好きだと信じたいですが、人の気持ちというものは理屈で計れるものではありませんから。

「ほほほっ。殿下にお任せしておけば、綺麗にお掃除は終わりますわ。あの方は『エリザベス様とそれ以外』という認識ですもの」

　アウラ様の言葉に、それは喜んでいいのかしら？と戸惑ってしまいます。

　六年前のアルバート様は、そういう感じではなかったですもの。

　絵に描いたような王子様な方で、とてもお優しくして下さったのを覚えています。

　私との婚約が直前で取りやめになった時も、別に執着を感じさせることもなく「幸せになって欲しい」と言って下さいました。

　そのアルバート様が？

　でもアウラ様のお話をお聞きする限り、その学園で広がっている噂は全て偽りということみたいですわね。

「エリザベス様がおそばにいれば、アルバート殿下を制御できるでしょう。早く、クシュリナ王国においでくださいませね」

「卒業資格を取れれば、クシュリナ王国で王太子妃教育を受ける予定ですわ。成人の日までに教育を終えるように向かうつもりです」

　アルバート様からは、私が成人してすぐに婚姻したいとお聞きしております。

　ですから、そのつもりで半年はクレメンタイン王国で教育を受けるようにしたのです。

　クレメンタイン王国の学園はスキップ制度を使っていますから、教育を受ける時間を取れますし、それにスキップ制度なら先に卒業資格を取ることが出来るのです。

　もちろん、クシュリナ王国の学園に通って、煩わしいことに関わるのが嫌だったのもありますけど、一番の理由は成人後すぐに婚姻出来るようにするためですわ。

　その意図を理解して下さったから、アルバート様も待っていて下さっているのです。

　しかし、どこの国にもいますのね。
そういう方って。

　少しだけ、気が重くなりますわ。