転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ！〜

モブ、絡まれる。

「お前が、殿下とエドワード先輩を土下座させたという、伯爵令嬢か？」

　朝イチから、脳筋が出た。

　というか、確かにエドワードは私に土下座したけど、私がさせたわけじゃないし、ヴェルハルトに関しては土下座なんてさせてない。

　そういや、ヴェルハルトはイレーヌとどうなったのかな。

　しかし、この脳筋。
私が来るまでこの入り口でずっと待ってたわけか？
　まぁ、無駄に体力だけはあるからなぁ。

　脳筋、もとい侯爵子息で、騎士団長子息のオリバー・ラトビア。
　燃えるような真っ赤な髪と瞳の、見るからに暑苦しい熱血漢だ。

　オリバーはハッキリ言って、脳筋だ。
逆に言えば、真っ直ぐで裏表がない。

　人のことはすぐに信じるし、悪いことは謝るまで許さないという融通の効かない、単純、いや馬鹿・・・いや、熱血漢である。

　私に絡んできたのでわかるように、コイツも攻略対象だ。

　私の作ったオリバーは、熱血漢の脳筋だけど、正義感溢れる人間だった。
　さて、目の前のオリバーは、どう違うのだろうか？

　まぁ、初対面の伯爵令嬢相手にお前呼ばわりだし、どちらかというと俺様系？な感じかな？

　俺様系はヴェルハルトの担当だから、キャラかぶりはやめて欲しい。

「何をおっしゃっているのか、理解できませんわ、ラトビア様。そのような仰り様は、キンバレー様や王太子殿下を貶めていると誤解されます」

「俺が悪いという気か？」

「まさか。ですが、事実無根なことを、このように他の者がいる場所で言うことはおススメいたしません」

　エドワードは確かに土下座したが、あの貸切の個室カフェでの出来事を知っているのは、私にカレリアとシキ、そしてエドワード本人だけである。

　まさか、本人や婚約者のカレリアが、エドワードの品位を貶めるようなことは言わないだろう。

　しかし、やっぱりオリバーは脳筋っぽいな。考えなしとも言うけど。

「あら？何をなさっていますの？」

「イレーヌ様、ごきげんよう」

「今、コイツが殿下とエドワード先輩を土下座させた件について話していたところだ」

　だから、土下座したのはエドワードだけだし、しかもさせたんじゃなく勝手にしたんだけどねっ！

「は？」

　イレーヌ様が目を丸くして、小首を傾げている。
　美人は、驚いた顔も美人だわ。
でもまぁ、びっくりするわよね。いつそんなことさせたんだって、疑われたらどうしよう。

　イレーヌはヴェルハルトのことを好きなわけだから、私が土下座させたなんて思ったら、嫌われるかもしれない。

「あ、あの、イレーヌ様・・・」

「ラトビア様、一体何をおっしゃっていますの？むしろ、ヴェルハルト殿下には本当に土下座してもらいたいくらいですわ」

　え？そうなの？