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お母様がお怒りな件
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「ふふっ、ふふふっ、そうなのね、入れ違いだなんて残念だわぁ」
王太子殿下と真実の愛のお相手を追い返した後、急いでお戻りになってくれたお母様が、笑顔のまま冷気を発していた。
しまったわ。
お母様に連絡したけど、イラッとして帰してしまったわ。
「お母様、急いでお帰りいただいたのに、ごめんなさい。ちょっとイラッとしてしまって帰らせてしまいましたの」
「いいのよ、ルチル。嫌な思いをしたのね」
「嫌というか・・・勝手に話しかけるわ、公爵令嬢を『さん』付けで呼ぶわ、私が王太子殿下を好きだと言うわ、とにかく不思議な生き物同伴でやって来て、それを注意しないばかりか、私に面倒を見ろと言われて、その・・・令嬢らしくない言葉が出そうになってしまいまして」
本当にどっちもあり得なかったわ。
友人ならともかく、初対面の男爵令嬢にさん付けで名前を呼ばれるとは思わなかったわ。
チェリーとか言ってたわね。
どこの男爵家かしら?
「お母様。王太子殿下の真実の愛のお相手って、どこの男爵家ですの?」
「セットウ男爵家よ。最近、男爵が平民の愛人と再婚したの。その夫人との子よ」
「ああ、それで」
あのお馬鹿な言動の理由が分かったわ。
別に、平民の方が常識がないとか言ってるわけじゃない。
でも、貴族特有のマナーとかを理解していないのは、元々が平民の方だからかもと思ったのよ。
「でもあれじゃあ、王太子殿下の愛妾にすらなれませんね」
いくら愛妾といえど、王族がお相手となると品位が問われる。
今の状態なら、愛妾にすることすら却下されると思うわ。
「ええ。王妃様も頭を痛められていたわ。今までルチルが婚約者だったから安心していたのに、まさかあんなにおかしな女に引っかかるだなんて、ってね」
「あの方を愛妾になさるのなら、王家で教育を施されるべきでしょうね。それに、新たに王太子妃になる婚約者も選ぶ必要もありますし」
「それがね・・・あの小娘を王太子妃にすると言ってるんですって」
「・・・どこかで頭でも打ったのでしょうか?それともそっくりな別人?」
まさか、そんなあり得ないことを王太子殿下が口にするなんて。
いえ。さっきもあり得ない、非常識なことを言っていたけれど。
そんなおかしなことを言う人だったかしら?
何か変な病にかかって、脳が侵されたとか。
「今日のことも王家に抗議しておくわ。それから、王太子殿下も来訪もお断りする旨も伝えておくわね」
先触れも出されても、王妃様にお断りと伝えておけば、門番も断れるわね。
私もばったり会わないように、お出かけを控えなきゃ。
王太子殿下と真実の愛のお相手を追い返した後、急いでお戻りになってくれたお母様が、笑顔のまま冷気を発していた。
しまったわ。
お母様に連絡したけど、イラッとして帰してしまったわ。
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「いいのよ、ルチル。嫌な思いをしたのね」
「嫌というか・・・勝手に話しかけるわ、公爵令嬢を『さん』付けで呼ぶわ、私が王太子殿下を好きだと言うわ、とにかく不思議な生き物同伴でやって来て、それを注意しないばかりか、私に面倒を見ろと言われて、その・・・令嬢らしくない言葉が出そうになってしまいまして」
本当にどっちもあり得なかったわ。
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チェリーとか言ってたわね。
どこの男爵家かしら?
「お母様。王太子殿下の真実の愛のお相手って、どこの男爵家ですの?」
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「ああ、それで」
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でも、貴族特有のマナーとかを理解していないのは、元々が平民の方だからかもと思ったのよ。
「でもあれじゃあ、王太子殿下の愛妾にすらなれませんね」
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今の状態なら、愛妾にすることすら却下されると思うわ。
「ええ。王妃様も頭を痛められていたわ。今までルチルが婚約者だったから安心していたのに、まさかあんなにおかしな女に引っかかるだなんて、ってね」
「あの方を愛妾になさるのなら、王家で教育を施されるべきでしょうね。それに、新たに王太子妃になる婚約者も選ぶ必要もありますし」
「それがね・・・あの小娘を王太子妃にすると言ってるんですって」
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いえ。さっきもあり得ない、非常識なことを言っていたけれど。
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「今日のことも王家に抗議しておくわ。それから、王太子殿下も来訪もお断りする旨も伝えておくわね」
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