婚約者から婚約破棄されたら、王弟殿下に捕まった件

みおな

文字の大きさ
13 / 88

ある意味襲撃者な件

しおりを挟む
「・・・言葉が通じない相手って、ある意味最強よね」

 門番から、セットウ男爵令嬢が来ていると聞いて、私はため息を吐いた。

 今日は王太子殿下同伴じゃなく一人で来たみたいだけど・・・

 多分、王太子殿下は王妃様から叱られて、外出禁止なんじゃないかしら。

 だって、真実の愛のお相手であるセットウ男爵令嬢が「ランスロット様と会えないのは、ルチルさんが何かしたんでしょう!」って喚いてるらしいし。

 しかし、いい度胸をしているわよね。

 公爵家の門前で、喚き散らすなんて。

 え?相手なんてしないわよ?
言葉が通じない相手に、そんな労力使うだけ無駄だもの。

 それにそろそろ、騎士団が回収に来てくれるし。

 わざわざうちが連絡しなくても、この辺りは公爵家や侯爵家の屋敷がある地域。

 当然のことながら、不審な人間を見かけたら、他所の門番も警戒して騎士団に連絡するシステムなのよ。

 もちろん緊急の場合は、うちが直接騎士団に通報するけど、相手はご令嬢。

 さすがに、ね。

「お嬢様。騎士団が到着したのですが・・・」

「何か問題があったの?」

「その・・・奥様がお帰りになりまして・・・」

 お母様は今日も、王宮に向かわれていた。

 当然、王太子殿下の愚行について抗議に行かれていたのだけど・・・

 まさかこのタイミングでお帰りになるなんて。

「それで?」

「奥様が騎士の方々にお引き取りいただきまして、その、男爵令嬢を屋敷にお連れになりました」

 ええぇ。めんどくさいわ。
お母様はお仕置きするつもりなんだろうけど、あの手の相手って常識では想像できない言動をするから。

「奥様が応接室に来るようにと」

「・・・分かったわ」

 そうよね。呼ぶわよね。
私がいた方があの子、ろくでもない発言するでしょうし。

 しかし、分からないわ。
あの子のどこがいいのかしら?

 顔?確かに可愛いけど、あの子レベルの可愛さなら他にもたくさんいるわよ。

 「お母様、ルチルです」

 応接室の扉を叩いて、到着を告げる。

 扉を開けた途端、男爵令嬢がソファーから立ち上がった。

「あー!ルチルさんっ!ランスロ・・・きゃあ!痛いっ!」

 ピシッ!

 男爵令嬢の向かいに座っているお母様の手の中で、細い鞭がしなった。

 あれって・・・
王宮での教育の時に使う鞭じゃないかしら。

 私は打たれたことはないけど、確か王太子殿下は子供の頃にマナー講座で打たれて泣いたと、王妃様に聞いたわ。

「な、な、なにするんですかっ!」

「ルチルは、公爵令嬢。そして私は公爵夫人よ。口の利き方がなってないわね」


しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

[完結]だってあなたが望んだことでしょう?

青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。 アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。 やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

処理中です...