誰が彼女を殺したか

みおな

文字の大きさ
7 / 39

婚約者とは?

 リリー・マゼンダ。
マゼンダ男爵家の娘で、王太子やラティエラたちと同い年のご令嬢である。

 ピンクブロンドのふわふわとした髪。
 同色の瞳は、ぱっちりしている。

 十人中八人は可愛いと思う容姿をした彼女は、感情豊かな令嬢だった。

 貴族、特に高位貴族になればなるほど、感情をあらわにすることはない。

 それは、相手に付け入る隙を与えてしまうから。

 だから幼い頃から、徹底的にマナーの一環として叩き込まれる。

 だが下位の貴族令嬢の場合は、そこまで神経質にはならない。

 彼女たちが嫁ぐとしても、同等か、せいぜい伯爵家まで。

 常識の範囲内であれば、困ることがないからである。

 だから、リリーの屈託のない笑顔を見た令息たちは、彼女を「可愛い」と思った。

 令嬢たちも、リリーが男爵令嬢ということもあり「愛嬌があるのはいいこと」だと言った。

 政略結婚が主な高位貴族の自分たちと違い、リリーは嫁入り先を見つけなければならないのだ。

 愛らしい笑顔に好意を持ってくれる令息を見つけなければならないだろうと、むしろ好意的に見ていた。

 だが、相手が王太子となると話は別である。

 ジョンブリアン王国の王太子ヴィクター。

 彼の婚約者は、公爵令嬢のラティエラである。

 リリーに一目惚れしたらしいヴィクターは、ラティエラを蔑ろにし、リリーを追いかけまわし始めた。

 その時点で、多くの令嬢は眉をしかめた。

 リリーにではなく、ヴィクターにである。

 そして、数日後。
ラティエラがヴィクターに進言する。

「マゼンダ男爵令嬢のことをお好きなのでしたら、婚姻して三年たてば愛妾としてお迎えくださってかまいません。離宮にお迎えし、公務以外は離宮でお過ごしくださることも了承いたします。わたくしとの夜伽も、後継さえ授かれば後は必要ありません。ですから、今は節度ある態度を取って下さいませ」

 ラティエラは、ヴィクターを人目のない場所へ誘導して、二人きりで話をするつもりだった。

 だがヴィクターはそれを聞き入れず、ラティエラは仕方なく周囲に少し離れてくれるように目線で訴えてから、教室の片隅でそうヴィクターに訴えた。

 聞き耳を立てていた級友たちは、ヴィクターの「嫉妬のあまりになんて醜い発言をする女だ!」という呆れた言葉に、あいた口が塞がらない。

 どれだけ可愛らしかろうと、リリーが王太子妃になることはできない。

 リリーを娶ろうと思うなら、ヴィクターは王籍を返上して男爵家に婿入りするか二人して平民になるしかない。

 まさか、王太子がそこまで馬鹿だとは。

 ラティエラが婚約者から下りるのなら、婚約者候補として名が上がってしまうかもしれない。

 まだ婚約者のいない令嬢たちは、その日家に戻り、両親に婚約者を至急探してくれるよう頼むのだった。
感想 80

あなたにおすすめの小説

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして

東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。 破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。