誰が彼女を殺したか

みおな

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失ったものとは?その2

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「その、マゼンダ男爵令嬢は本当に亡くなったのか?」

 リリーの遺体を見ていないヴィクターは、どうしてもそれを信じることが出来なかった。

 もしかしたら、ラティエラがリリーを閉じ込めているのかもしれない。

 ウィスタリア公爵家の力があれば、男爵家など簡単にどうにかできるだろう。

 きっとリリーは生きて、
 ヴィクターはそう信じて疑わなかった。

 だが。

「ええ。私は葬儀に参列しましたから。あの可愛らしい顔も傷だらけで・・・ご夫妻の嘆きようがかわいそうでなりませんでした」

「参、列・・・したのか」

「え?ええ。参列したのは、この近所の者と、あとは夫妻が親しくしていた方々が。ああ、ご令嬢と年齢の近い方はご遠慮いただいていましたよ。娘の綺麗な顔を覚えていて欲しいからとおっしゃって」

 サマー男爵夫人が嘘をついているようには、ヴィクターには見えなかった。

 娘の綺麗な顔を覚えていて欲しいから。

 先ほど夫人は、リリーの顔が傷だらけだと言っていた。

 ならば、夫妻が自分たちの参列を拒んだのは、その言葉通り『綺麗なリリーを覚えていて欲しいから』なのか。

「な、何故・・・亡くなった、のだ?」

 ヴィクターの問いに、夫人は顔を顰める。

「それが・・・殿下はご存知かどうか知りませんが、リリーちゃん・・・ああ、すみません。いつもこう呼んでいたもので。彼女を追いかけ回している男がいたらしいんです」

「追いかけ・・・」

「どうやら高位貴族のご子息らしくて、その男にあまりに執着されているものですから、リリーちゃんを手に入れればその男からお金を取れると思ったらしくて・・・」

「は、犯人は捕まったのか?」

 そうだ。
事故でないのなら、リリーを殺した犯人がいるはずだ。

 だが、夫人は首を横に振る。

「リリーちゃんは、捕まっていたところから逃げ出して来たんです。でも、目隠しをされ手を縛られていたせいで、木々にぶつかった挙句、崖から落ちて・・・ただ、見つかった時まだ意識があって、それで事情がわかったのです」

 サマー男爵夫人の説明に、ヴィクターは全身から血の気が引くのを感じた。

 自分がちゃんとせいで、愛しいリリーがそんな目にあっていたとは。

 自分の助けをリリーを、助けることが出来なかった。

 その強い思い込みは、学園でリリーと会えなかったことのに向かう。

 そう。
全てがラティエラがからリリーを迫害していたのがいけないのだ、と。
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