17 / 39
失ったものとは?その2
しおりを挟む
「その、マゼンダ男爵令嬢は本当に亡くなったのか?」
リリーの遺体を見ていないヴィクターは、どうしてもそれを信じることが出来なかった。
もしかしたら、ラティエラが何かしてリリーを閉じ込めているのかもしれない。
ウィスタリア公爵家の力があれば、男爵家など簡単にどうにかできるだろう。
きっとリリーは生きて、ヴィクターの助けを待っている。
ヴィクターはそう信じて疑わなかった。
だが。
「ええ。私は葬儀に参列しましたから。あの可愛らしい顔も傷だらけで・・・ご夫妻の嘆きようがかわいそうでなりませんでした」
「参、列・・・したのか」
「え?ええ。参列したのは、この近所の者と、あとは夫妻が親しくしていた方々が。ああ、ご令嬢と年齢の近い方はご遠慮いただいていましたよ。娘の綺麗な顔を覚えていて欲しいからとおっしゃって」
サマー男爵夫人が嘘をついているようには、ヴィクターには見えなかった。
娘の綺麗な顔を覚えていて欲しいから。
先ほど夫人は、リリーの顔が傷だらけだと言っていた。
ならば、夫妻が自分たちの参列を拒んだのは、その言葉通り『綺麗なリリーを覚えていて欲しいから』なのか。
「な、何故・・・亡くなった、のだ?」
ヴィクターの問いに、夫人は顔を顰める。
「それが・・・殿下はご存知かどうか知りませんが、リリーちゃん・・・ああ、すみません。いつもこう呼んでいたもので。彼女を追いかけ回している男がいたらしいんです」
「追いかけ・・・」
「どうやら高位貴族のご子息らしくて、その男にあまりに執着されているものですから、リリーちゃんを手に入れればその男からお金を取れると思ったらしくて・・・」
「は、犯人は捕まったのか?」
そうだ。
事故でないのなら、リリーを殺した犯人がいるはずだ。
だが、夫人は首を横に振る。
「リリーちゃんは、捕まっていたところから逃げ出して来たんです。でも、目隠しをされ手を縛られていたせいで、木々にぶつかった挙句、崖から落ちて・・・ただ、見つかった時まだ意識があって、それで事情がわかったのです」
サマー男爵夫人の説明に、ヴィクターは全身から血の気が引くのを感じた。
自分がちゃんと見守っていなかったせいで、愛しいリリーがそんな目にあっていたとは。
自分の助けを待っていたリリーを、助けることが出来なかった。
その強い思い込みは、学園でリリーと会えなかったことの原因に向かう。
そう。
全てがラティエラが嫉妬からリリーを迫害していたのがいけないのだ、と。
リリーの遺体を見ていないヴィクターは、どうしてもそれを信じることが出来なかった。
もしかしたら、ラティエラが何かしてリリーを閉じ込めているのかもしれない。
ウィスタリア公爵家の力があれば、男爵家など簡単にどうにかできるだろう。
きっとリリーは生きて、ヴィクターの助けを待っている。
ヴィクターはそう信じて疑わなかった。
だが。
「ええ。私は葬儀に参列しましたから。あの可愛らしい顔も傷だらけで・・・ご夫妻の嘆きようがかわいそうでなりませんでした」
「参、列・・・したのか」
「え?ええ。参列したのは、この近所の者と、あとは夫妻が親しくしていた方々が。ああ、ご令嬢と年齢の近い方はご遠慮いただいていましたよ。娘の綺麗な顔を覚えていて欲しいからとおっしゃって」
サマー男爵夫人が嘘をついているようには、ヴィクターには見えなかった。
娘の綺麗な顔を覚えていて欲しいから。
先ほど夫人は、リリーの顔が傷だらけだと言っていた。
ならば、夫妻が自分たちの参列を拒んだのは、その言葉通り『綺麗なリリーを覚えていて欲しいから』なのか。
「な、何故・・・亡くなった、のだ?」
ヴィクターの問いに、夫人は顔を顰める。
「それが・・・殿下はご存知かどうか知りませんが、リリーちゃん・・・ああ、すみません。いつもこう呼んでいたもので。彼女を追いかけ回している男がいたらしいんです」
「追いかけ・・・」
「どうやら高位貴族のご子息らしくて、その男にあまりに執着されているものですから、リリーちゃんを手に入れればその男からお金を取れると思ったらしくて・・・」
「は、犯人は捕まったのか?」
そうだ。
事故でないのなら、リリーを殺した犯人がいるはずだ。
だが、夫人は首を横に振る。
「リリーちゃんは、捕まっていたところから逃げ出して来たんです。でも、目隠しをされ手を縛られていたせいで、木々にぶつかった挙句、崖から落ちて・・・ただ、見つかった時まだ意識があって、それで事情がわかったのです」
サマー男爵夫人の説明に、ヴィクターは全身から血の気が引くのを感じた。
自分がちゃんと見守っていなかったせいで、愛しいリリーがそんな目にあっていたとは。
自分の助けを待っていたリリーを、助けることが出来なかった。
その強い思い込みは、学園でリリーと会えなかったことの原因に向かう。
そう。
全てがラティエラが嫉妬からリリーを迫害していたのがいけないのだ、と。
107
あなたにおすすめの小説
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる