誰が彼女を殺したか

みおな

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舞台からの退場?

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 ヴィクターの頭の中は混乱しまくっていたが、体は動かず発言をすることも叶わない。

 その場から、何事もなかったように退場させられた。

 ヴィクターが座っていた椅子は、可動式のものらしく、侍従が押してくれていた。

「済まないな。断っても良いんだぞ?」

「いえ。お仕えさせてください。殿下・・・ヴィクター様には以前とても良くしていただきました。お仕えしたいのです」

「そうか・・・ありがとう」

 穏やかな父の声が聞こえ、そのまま客間らしき部屋に通される。

「我々は、パーティーが終わるまではここで待っている。準備を頼んでもかまわないか?」

「はい。ある程度は揃えてありますが、再度確認しておきます。王太子殿下方は、パーティーが終わり次第にこちらにおいでになるそうですから、それまでごゆっくりなさってください。侍女にお茶を用意させます」

 そう言ってヴィクターの椅子を押していた侍従がいなくなり、代わりに侍女がお茶の準備を始める。

 だが体の動かないヴィクターは、お茶を飲むことも出来ない。

 母親が水を含ませた綿をヴィクターの口元に近付け、唇を湿らせてくれる。

 そう。口を動かすこともままならないのだ。

 そのことは、ヴィクターに死を予感させた。

 こんなことに?

 王太子として、リリーを王太子妃に迎え、幸せになるはずだった。

 それなのに。

 リリーは儚くなり、ヴィクター本人も自分で動くことも出来なくなった。

 誰かが与えてくれなければ、水を飲むことも出来ない。

 ゾッとした。

 そのヴィクターの目の前に、父親が膝をついて座った。

 母親もソファーから立ち上がり、夫の隣に座る。

「ヴィクター。お前には二つの選択肢がある。このまま毒杯を賜るか、それとも思い通りにならない体で、それでも生き続けるか。お前はどちらを望む?」

「・・・」

 もちろんヴィクターには、答えることも出来ない。

 だが、その目は雄弁に語っていた。

 毒杯を賜らなければならないのか?
 

 そんな息子を、両親は憐れみの視線で見つめる。

 学園に入るまでは、特別優秀でなくとも、普通の息子だったのに。

 恋というものは、こんなにも人を愚かにしてしまうのか。

「ヴィクター。王命の婚約者を蔑ろにして、王太子妃にすることの出来ない男爵令嬢を追いかけ回したりした?愛妾にと譲歩してくれた婚約者を悪きざまに罵った?お前は、どうしてそんなに愚かになったのだ?」
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