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彼女の復讐?
「駄目だよ、伯父上。約束したでしょう?彼女が望むその時まで、絶対にヴィクターを死なせないって」
ヴィクターは扉に背を向けていたが、その声で入ってきたのはギルバートだと察した。
「でも、ギルバート・・・」
「伯母上。ヴィクターの生きるための世話係の給金も、食事代も薬代も、全てが彼女の個人資産から出るんだ。誰にも文句は言えないよ」
ヴィクターは心の中で首を傾げる。
王族である自分たちの生活費は、たとえ国王でなくなっても税金で賄われる。
就任中はもちろんだが、退任後はいわゆる退職金という形で払われるのだ。
法外な金額ではないが、元国王夫妻が普通に生活できるためのお金が支給される。
侍女や侍従も最低限の人数はつけられ、彼らの給金もその退職金に含まれる。
だが今回の場合、元国王夫妻はともかくヴィクターという『問題』があった。
真の病なら、税金でその治療を行ったり生活の保障をすることができる。
だが、ヴィクターの場合はこれが適用されない。
ヴィクターを生かしたいなら、元国王夫妻に与えられる退職金からヴィクターの世話係を雇い、何もかもを補わなければならない。
本来なら、退位自体がもっと先だったことで払われる退職金はさほど多くない。
慎ましく夫妻が暮らせば、ギリギリ寿命を全うできる程度だ。
とてもじゃないが、手のかかるヴィクターを世話することは難しい。
だが、ここで声を上げたのはラティエラだ。
ヴィクターにかかるすべてのお金を、ラティエラの個人資産で賄うと言ったのだ。
ラティエラの個人資産とは、ラティエラが自分で始めた事業で得られた利益だ。
そこには全くウィスタリア公爵家は関わっていないので、公爵領民の税金とも違う。
当然ながら、婚約者として、そしてこの先王太子妃として得られるお金でもない。
つまり、誰にも文句を言うことが出来ないのだ。
彼女がお金を出す限り、ヴィクターは元国王夫妻が住まうことになる西の離宮に住まうことが出来る。
ギルバートの言葉に、元国王夫妻は俯いた。
夫妻は、それをラティエラの優しさだと能天気に考えることは出来ない。
生殺与奪の権はラティエラにある。
ヴィクターが死にたいと願っても、ラティエラがヴィクターを生かすための栄養剤を与え続けるよう指示すれば、ヴィクターは死ねない。
逆に生きたいと願っても、ラティエラがお金の支給をやめれば、両親が自分たちのお金をヴィクターの生存に注ぎ込んでも、お金が尽きれば両親を巻き込んで死ぬしかない。
そう。
全てはラティエラの掌の上だった。
ヴィクターは扉に背を向けていたが、その声で入ってきたのはギルバートだと察した。
「でも、ギルバート・・・」
「伯母上。ヴィクターの生きるための世話係の給金も、食事代も薬代も、全てが彼女の個人資産から出るんだ。誰にも文句は言えないよ」
ヴィクターは心の中で首を傾げる。
王族である自分たちの生活費は、たとえ国王でなくなっても税金で賄われる。
就任中はもちろんだが、退任後はいわゆる退職金という形で払われるのだ。
法外な金額ではないが、元国王夫妻が普通に生活できるためのお金が支給される。
侍女や侍従も最低限の人数はつけられ、彼らの給金もその退職金に含まれる。
だが今回の場合、元国王夫妻はともかくヴィクターという『問題』があった。
真の病なら、税金でその治療を行ったり生活の保障をすることができる。
だが、ヴィクターの場合はこれが適用されない。
ヴィクターを生かしたいなら、元国王夫妻に与えられる退職金からヴィクターの世話係を雇い、何もかもを補わなければならない。
本来なら、退位自体がもっと先だったことで払われる退職金はさほど多くない。
慎ましく夫妻が暮らせば、ギリギリ寿命を全うできる程度だ。
とてもじゃないが、手のかかるヴィクターを世話することは難しい。
だが、ここで声を上げたのはラティエラだ。
ヴィクターにかかるすべてのお金を、ラティエラの個人資産で賄うと言ったのだ。
ラティエラの個人資産とは、ラティエラが自分で始めた事業で得られた利益だ。
そこには全くウィスタリア公爵家は関わっていないので、公爵領民の税金とも違う。
当然ながら、婚約者として、そしてこの先王太子妃として得られるお金でもない。
つまり、誰にも文句を言うことが出来ないのだ。
彼女がお金を出す限り、ヴィクターは元国王夫妻が住まうことになる西の離宮に住まうことが出来る。
ギルバートの言葉に、元国王夫妻は俯いた。
夫妻は、それをラティエラの優しさだと能天気に考えることは出来ない。
生殺与奪の権はラティエラにある。
ヴィクターが死にたいと願っても、ラティエラがヴィクターを生かすための栄養剤を与え続けるよう指示すれば、ヴィクターは死ねない。
逆に生きたいと願っても、ラティエラがお金の支給をやめれば、両親が自分たちのお金をヴィクターの生存に注ぎ込んでも、お金が尽きれば両親を巻き込んで死ぬしかない。
そう。
全てはラティエラの掌の上だった。
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