誰が彼女を殺したか

みおな

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終幕〜本編最終話〜

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「伯父上たちが・・・身罷られたそうだよ」

 ラティエラは、夫となったギルバートの言葉に顔を上げた。

 ラティエラは今年学園を卒業し、王太子ギルバートと婚姻した。

 王太子となったギルバートは、新たに王太子側近となった者たちと共に、日々王太子としての公務に励んでいた。

 休憩時間には、必ず妻であるラティエラの元を訪れ、一緒にお茶を飲むのがギルバートの日課だ。

 側近たちにも、婚約者が来れる時には王宮に招き、庭園などで交流をするように勧めている。

 仕事を言い訳にして婚約者や妻を蔑ろにしない。

 ギルバートが側近たちに最初に宣言した『約束事』だ。

 さすがに側近の婚約者だからといって、王太子の執務室エリアには入らせることはできないが、庭園や客室の使用の許可は与えてある。

 毎日とはいかないようだが、婚約者のご令嬢たちも余程の用がない限り、王宮まで婚約者との交流に足を運んでいた。

 ラティエラは、カップをソーサーに戻すと、小さく息を吐いた。

「そうですか・・・」

「侍従の彼が墓守をしたいと言ってきた。どうする?」

「・・・そうですわね。お願いしてはいかがでしょうか。西の離宮も当分使う予定はございませんし、ご本人がお望みになる限りは」

「分かった。そう手配しよう。彼は本当に献身的に伯父上たちに尽くしてくれたしね。その礼になると良いけど」

 かつて王太子ヴィクターの侍従であった青年は、ヴィクターに恩を感じていた。

 だから、あのような姿になったヴィクターのことを「最後までお世話をしたい」と望んだのだ。

 ラティエラは、その侍従の給金もヴィクターが生きるための薬や生活必需品代も、すべて自身の個人資産から出していた。

 ギルバートや周囲には、ラティエラ本人が望むまではヴィクターはと言っていたが、ラティエラの本心は少し違う。

 どれだけ愚かでも、元国王夫妻にとっては可愛い一人息子だ。

 そしてラティエラにとっても、学園に入学するまでは良き婚約者だった。

 ラティエラは、として、ヴィクターを断罪しないわけにはいかない。

 だから、最後の時に元王妃殿下に渡していたのだ。

「もう充分だと思われたら、コレを」

 それは、安らかに永遠の眠りにつける薬。

 国王夫妻がヴィクターと共に死ぬつもりだと、ラティエラは気付いていた。

 そして、ラティエラはそれを止めない選択をした。

 もし、自分がヴィクターの婚約者のままで、彼と良い関係を築いていたなら、自分も同じ選択をしたと思うから。

 ヴィクターは、二人の女性を殺した。

 一人は、リリー・マゼンダ男爵令嬢。

 彼女はジョンブリアン王国では死んだこととされ、リリーの名は貴族名鑑から消えた。

 そしてもう一人は、ラティエラ・ウィスタリア公爵令嬢。

 婚約者であったヴィクターのことを慕っていた彼女は、もういない。


*****本編完結*****
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