31 / 39
終幕〜本編最終話〜
「伯父上たちが・・・身罷られたそうだよ」
ラティエラは、夫となったギルバートの言葉に顔を上げた。
ラティエラは今年学園を卒業し、王太子ギルバートと婚姻した。
王太子となったギルバートは、新たに王太子側近となった者たちと共に、日々王太子としての公務に励んでいた。
休憩時間には、必ず妻であるラティエラの元を訪れ、一緒にお茶を飲むのがギルバートの日課だ。
側近たちにも、婚約者が来れる時には王宮に招き、庭園などで交流をするように勧めている。
仕事を言い訳にして婚約者や妻を蔑ろにしない。
ギルバートが側近たちに最初に宣言した『約束事』だ。
さすがに側近の婚約者だからといって、王太子の執務室エリアには入らせることはできないが、庭園や客室の使用の許可は与えてある。
毎日とはいかないようだが、婚約者のご令嬢たちも余程の用がない限り、王宮まで婚約者との交流に足を運んでいた。
ラティエラは、カップをソーサーに戻すと、小さく息を吐いた。
「そうですか・・・」
「侍従の彼が墓守をしたいと言ってきた。どうする?」
「・・・そうですわね。お願いしてはいかがでしょうか。西の離宮も当分使う予定はございませんし、ご本人がお望みになる限りは」
「分かった。そう手配しよう。彼は本当に献身的に伯父上たちに尽くしてくれたしね。その礼になると良いけど」
かつて王太子ヴィクターの侍従であった青年は、ヴィクターに恩を感じていた。
だから、あのような姿になったヴィクターのことを「最後までお世話をしたい」と望んだのだ。
ラティエラは、その侍従の給金もヴィクターが生きるための薬や生活必需品代も、すべて自身の個人資産から出していた。
ギルバートや周囲には、ラティエラ本人が望むまではヴィクターは死なせないと言っていたが、ラティエラの本心は少し違う。
どれだけ愚かでも、元国王夫妻にとっては可愛い一人息子だ。
そしてラティエラにとっても、学園に入学するまでは良き婚約者だった。
ラティエラは、王太子妃になる者として、ヴィクターを断罪しないわけにはいかない。
だから、最後の時に元王妃殿下に渡していたのだ。
「もう充分だと思われたら、コレを」
それは、安らかに永遠の眠りにつける薬。
国王夫妻がヴィクターと共に死ぬつもりだと、ラティエラは気付いていた。
そして、ラティエラはそれを止めない選択をした。
もし、自分がヴィクターの婚約者のままで、彼と良い関係を築いていたなら、自分も同じ選択をしたと思うから。
ヴィクターは、二人の女性を殺した。
一人は、リリー・マゼンダ男爵令嬢。
彼女はジョンブリアン王国では死んだこととされ、リリーの名は貴族名鑑から消えた。
そしてもう一人は、ラティエラ・ウィスタリア公爵令嬢。
婚約者であったヴィクターのことを慕っていた彼女は、もういない。
*****本編完結*****
ラティエラは、夫となったギルバートの言葉に顔を上げた。
ラティエラは今年学園を卒業し、王太子ギルバートと婚姻した。
王太子となったギルバートは、新たに王太子側近となった者たちと共に、日々王太子としての公務に励んでいた。
休憩時間には、必ず妻であるラティエラの元を訪れ、一緒にお茶を飲むのがギルバートの日課だ。
側近たちにも、婚約者が来れる時には王宮に招き、庭園などで交流をするように勧めている。
仕事を言い訳にして婚約者や妻を蔑ろにしない。
ギルバートが側近たちに最初に宣言した『約束事』だ。
さすがに側近の婚約者だからといって、王太子の執務室エリアには入らせることはできないが、庭園や客室の使用の許可は与えてある。
毎日とはいかないようだが、婚約者のご令嬢たちも余程の用がない限り、王宮まで婚約者との交流に足を運んでいた。
ラティエラは、カップをソーサーに戻すと、小さく息を吐いた。
「そうですか・・・」
「侍従の彼が墓守をしたいと言ってきた。どうする?」
「・・・そうですわね。お願いしてはいかがでしょうか。西の離宮も当分使う予定はございませんし、ご本人がお望みになる限りは」
「分かった。そう手配しよう。彼は本当に献身的に伯父上たちに尽くしてくれたしね。その礼になると良いけど」
かつて王太子ヴィクターの侍従であった青年は、ヴィクターに恩を感じていた。
だから、あのような姿になったヴィクターのことを「最後までお世話をしたい」と望んだのだ。
ラティエラは、その侍従の給金もヴィクターが生きるための薬や生活必需品代も、すべて自身の個人資産から出していた。
ギルバートや周囲には、ラティエラ本人が望むまではヴィクターは死なせないと言っていたが、ラティエラの本心は少し違う。
どれだけ愚かでも、元国王夫妻にとっては可愛い一人息子だ。
そしてラティエラにとっても、学園に入学するまでは良き婚約者だった。
ラティエラは、王太子妃になる者として、ヴィクターを断罪しないわけにはいかない。
だから、最後の時に元王妃殿下に渡していたのだ。
「もう充分だと思われたら、コレを」
それは、安らかに永遠の眠りにつける薬。
国王夫妻がヴィクターと共に死ぬつもりだと、ラティエラは気付いていた。
そして、ラティエラはそれを止めない選択をした。
もし、自分がヴィクターの婚約者のままで、彼と良い関係を築いていたなら、自分も同じ選択をしたと思うから。
ヴィクターは、二人の女性を殺した。
一人は、リリー・マゼンダ男爵令嬢。
彼女はジョンブリアン王国では死んだこととされ、リリーの名は貴族名鑑から消えた。
そしてもう一人は、ラティエラ・ウィスタリア公爵令嬢。
婚約者であったヴィクターのことを慕っていた彼女は、もういない。
*****本編完結*****
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定