誰が彼女を殺したか

みおな

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あの花が咲いたら〜ラティエラのその後①〜

 ヴィクターと両親である元国王夫妻が西の離宮で暮らし始めて一年半。

 ラティエラは、真っ白なウェディングドレスに身を包んでいた。

 今日、ラティエラは王太子ギルバートと婚姻し、王太子妃となる。

 花嫁控室で、ラティエラはリリーから届いた手紙を読んでいた。

 フェリノス王国の王都で、リリーはパン屋で働いているそうだ。

 そして初めてのお給金で買ったという、薄紫色の便箋でラティエラに手紙を送って来た。

 その手紙も、この一年半で二十通ほどになる。

 近況報告の手紙には、パン屋の女将さんが親切でいつもパンをくれること。

 母親である元マゼンダ男爵夫人が、レストランの裏方で働き始めてから、どこかイキイキとしていること。

 ラティエラが紹介してくれた仕事は、父親に合っているのか毎日楽しそうに仕事に向かっていること。

 そんな微笑ましいことばかりが書かれている。

 念の為に小ぶりな宝石は渡してあるが、遠く離れているラティエラは、すぐに手を貸してやることは出来ない。

 きっと、苦労したこともあるだろう。

 フェリノス王国へ向かったリリーたちを、ラティエラは護衛を雇って見守らせていた。

 死んだことになっているため大丈夫だとは思うが、もしものことがあれば大変だからだ。

 それも半年経ち、大丈夫そうだと判断して護衛を解いた。

 ラティエラに感謝しているリリーは、辛いことや大変なことがあってもラティエラには伝えてこない。

 そして、ラティエラ側のことを聞こうとはしない。

 ラティエラも返事を書くが、ジョンブリアン王国のことは一切書かない。

 リリーたちが楽しそうで良かったこと。

 フェリノス王国は気候がいいから、過ごしやすいだろうということ。

 多くの花が咲く祭りがあると聞いたから、楽しんで欲しいということ。

 いつか・・・好きな人が出来たら、結婚して幸せになって欲しいということ。

 王太子妃になるラティエラは、お祝いに駆けつけるわけにはいかない。

 リリーが生きていることを、自分たち以外に知られるわけにはいかないのだ。

 お祝いを贈る日が来るのを、心待ちにしている、とラティエラは伝えた。

 手紙は今まで通りに、ウィスタリア公爵家宛に送ってもらうことにしている。

 王太子妃宛の手紙は、全てにチェックが入る。

 個人宛の手紙なので内容までは読まれないが、差出人はチェックされるし、危険物が入っていないか封は切られる。

 月に一通だが、リリという差出人の手紙に何か気付く人間もいるかもしれない。

 ギルバートと国王夫妻は、リリーの生存を知っているが、より安全な方法をとるべきだとラティエラは判断した。
 
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