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みおな

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8.あの方と並び立ちたい

 その日。
側妃マーガレットは正妃システィーナにお茶会に呼ばれた。

 十七年前、子を授からないからと側妃になる打診を受けたマーガレット。

 オブシディアン王国王太子であったマクシミリアンとは幼馴染であった。

 ただ、公爵令嬢ではあったが何事にも控えめで慎ましやかなマーガレットよりも、侯爵令嬢であるヴィオラ・ロードライトの方が相応しいとされていた婚約。

 しかし、ヴィオラがアメトリン公爵令息と婚約をしたことで、マクシミリアンの婚約は宙ぶらりんの状態だった。

 そこに当時、周辺国との国交状況が芳しくなかったシスティーナの実家であるアイドクレース王国から婚約打診が入った。

 王族として、国の利益を考え、マクシミリアンはシスティーナと婚約を結び、王太子となった。

 実はマーガレットは、幼い頃からマクシミリアンにほのかな好意を抱いていた。

 しかし、自分からそれを口にする勇気がなかった。

 娘の幼い頃からの想いに気付いていた両親は、マーガレットに新たな婚約を急いで勧めようとはしなかった。

 家を継ぐマーガレットの兄も、妹の幸せを願い、妹の気持ちが落ち着くまでと言っていた。

 そんな家族の愛に、マーガレットも公爵令嬢として、家の利になる婚約を結ぶ決意をした。

 そして、婚約者の選定を始めようとした時。

 側妃の打診が入った。

(あの時も、こんなふうにシスティーナ様にお茶に呼ばれたわ)

 側妃の打診があり、マクシミリアンと会って話す前に、王太子妃であるシスティーナからお茶会の誘いがあった。

 そして、その場でシスティーナから言われたのだ。

「側妃になり、王太子の子を産んでほしい」と。

 オブシディアン王国では、王族だけでなく貴族も第二夫人を持つことが出来る。

 ただし、妻が子を三年授からないという状況の場合のみだ。

 血を継ぐ役目という前提でのみ、許可されるのである。

 オブシディアン王国では、王太子の第二夫人の役目は次代を産むこと、だけである。

 社交も執務も公務も、第一夫人である王太子妃の役目であり、第二夫人の役目は寵愛を受け子を産むことだけだ。

 そんなに娘を妹をすることを、マーガレットの家族たちは躊躇った。

 王家からの打診とはいえ、娘の幸せを思えば断るべきだと考えていた。

 それを覆したのは、マーガレットの意思だった。

「私は、第二夫人として王太子殿下に嫁ぎます。そして、システィーナ様をお支えしたい」

 婚約打診後に、システィーナからお茶会に呼ばれたマーガレット。

 システィーナから王太子の子を産んで欲しいと願われ、そして未来の側妃としてと言われたのだ。

 お飾りの、陰の身ではなく、王太子妃未来の王妃の隣で彼女を支える存在になる。

「私はあの方と並び立ちたい」

 
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