15 / 47
15.ドレスは不要ですわ
ユリシスから「学園ではひとりの男として過ごしたい」宣言を受けたティファは、お昼休みも登下校もユリシスと距離を置くことにした。
見切りを付けたのなら、学園卒業時に婚約を解消することを念頭において、距離を取る方がいいとヴィオラから提案されたからだ。
ちなみに、ユリシスの母親である正妃システィーナもこの案に納得しているそうだ。
彼女は、ユリシスの母親である前にオブシディアン王国の王妃なのである。
ユリシスは、登下校は一緒にと言っていたが、ティファは丁寧にお断りした。
国王陛下も王妃殿下も、ユリシスが王太子として立太子するに相応しいか、王族籍を持つに相応しいか、その見極めをしているらしい。
ならば、ティファは距離を置いた方がいい。
そう判断した。
決してユリシスを嫌いではなかったし、今でも嫌っているわけではない。
ただ呆れているだけだ。
そして痛みは伴うものの、好きという気持ちが目減りしているだけ。
ティファは、王太子妃教育で学んだのだ。
情に流されず、王太子妃として正しい選択をするようにと。
「ティファ様。姉が是非ティファ様にドレスを作りたいと申しておりますの」
ティファの前に座ったヘリオドール伯爵令嬢であるフラウが、分厚い紙の束をティファに差し出しながら言う。
フラウの五歳年上の姉であるフラナは、王都で人気のデザイナーだ。
「まぁ!素晴らしいですわ。さすがフラウ様のお姉様!ティファ様が着れば今よりももっと人気になりましてよ」
「ええ。レディーノ様のおっしゃる通りですわ。フラナ様のドレスは、我が商会でも取り扱って欲しいと要望がありますのよ」
レディーノ・カルセドニー侯爵令嬢の言葉に、サーペンティン伯爵家の令嬢であるシャリーが頷く。
あの日会話を交わしてから、ティファは三人の令嬢と共に過ごすことが増えた。
彼女たちは身分も申し分なく、考え方もティファには好感の持てるものだったからだ。
それ以来お互い名前で呼ぶようになり、お昼の食事時間や休日さえも一緒に過ごしていた。
「姉はお気に召さない方のドレスは、いくらお金を積まれてもデザインしませんの。ティファ様のは是非にと姉から伝えて欲しいと言われましたのよ」
「ふふっ、本当に嬉しいですわ。母と妹が羨ましがりそう」
「なら、そう姉に伝えておきますわ。青以外にいたしましょうね」
フラウの言葉に、ティファはふふっと笑う。
青は婚約者であるユリシスの瞳の色。
「ふふっ。殿下にはドレスは不要とお伝えしなければなりませんわね」
見切りを付けたのなら、学園卒業時に婚約を解消することを念頭において、距離を取る方がいいとヴィオラから提案されたからだ。
ちなみに、ユリシスの母親である正妃システィーナもこの案に納得しているそうだ。
彼女は、ユリシスの母親である前にオブシディアン王国の王妃なのである。
ユリシスは、登下校は一緒にと言っていたが、ティファは丁寧にお断りした。
国王陛下も王妃殿下も、ユリシスが王太子として立太子するに相応しいか、王族籍を持つに相応しいか、その見極めをしているらしい。
ならば、ティファは距離を置いた方がいい。
そう判断した。
決してユリシスを嫌いではなかったし、今でも嫌っているわけではない。
ただ呆れているだけだ。
そして痛みは伴うものの、好きという気持ちが目減りしているだけ。
ティファは、王太子妃教育で学んだのだ。
情に流されず、王太子妃として正しい選択をするようにと。
「ティファ様。姉が是非ティファ様にドレスを作りたいと申しておりますの」
ティファの前に座ったヘリオドール伯爵令嬢であるフラウが、分厚い紙の束をティファに差し出しながら言う。
フラウの五歳年上の姉であるフラナは、王都で人気のデザイナーだ。
「まぁ!素晴らしいですわ。さすがフラウ様のお姉様!ティファ様が着れば今よりももっと人気になりましてよ」
「ええ。レディーノ様のおっしゃる通りですわ。フラナ様のドレスは、我が商会でも取り扱って欲しいと要望がありますのよ」
レディーノ・カルセドニー侯爵令嬢の言葉に、サーペンティン伯爵家の令嬢であるシャリーが頷く。
あの日会話を交わしてから、ティファは三人の令嬢と共に過ごすことが増えた。
彼女たちは身分も申し分なく、考え方もティファには好感の持てるものだったからだ。
それ以来お互い名前で呼ぶようになり、お昼の食事時間や休日さえも一緒に過ごしていた。
「姉はお気に召さない方のドレスは、いくらお金を積まれてもデザインしませんの。ティファ様のは是非にと姉から伝えて欲しいと言われましたのよ」
「ふふっ、本当に嬉しいですわ。母と妹が羨ましがりそう」
「なら、そう姉に伝えておきますわ。青以外にいたしましょうね」
フラウの言葉に、ティファはふふっと笑う。
青は婚約者であるユリシスの瞳の色。
「ふふっ。殿下にはドレスは不要とお伝えしなければなりませんわね」
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
*らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。
藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。
学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。
そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。
それなら、婚約を解消いたしましょう。
そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
婚約者が妹に心変わり?では一刺しして家を捨てましょう。皆様、あとはご自由に。
さんけい
恋愛
婚約者が妹に心変わりした。
しかも家族は、傷ついた私を慰めるどころか、「長女なら分別を」と静かに飲み込ませようとする。
――でしたら、私ももう都合のいい娘ではいません。
商家の長女セリーヌは、置き手紙ひとつを残して家を出た。
今まで自分が黙って支えていたものごとに、最後の一刺しだけを残して。
教会町で偽名を名乗り、小さな仕事を得て、自分の居場所を作り始めるセリーヌ。
一方、彼女を失った実家では、婚約者と妹の熱に振り回されるうち、家の綻びが少しずつ表に出始める。
これは、婚約者を妹に奪われた令嬢が、家族への復讐のために生きるのではなく、自分の人生を取り戻していく物語。
静かに家を捨てた長女の不在は、やがて残された者たちにじわじわと効いていく……
※初日以外は12時と22時に更新予定です。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。