どうぞお好きになさってください

みおな

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16.望み通りにしてあげますわ

「え?ドレスもエスコートも不要って、どうして?」

 定例のお茶会でのティファの言葉に、ユリシスは驚きの声を上げた。

 学園で定期的に開催されるパーティー。

 入学式のあとは、学期末の初夏に行われるのだが、その夜会でのエスコートとドレスのプレゼントをティファは断ったのだ。

 学園の行事として、婚約者として定例のお茶会には赴いていたものの、ティファとしては学園の行事は行動を共にするつもりはなかった。

「ええ。今回は、友人たちとお揃いのドレスにする予定ですの。公の場では出来ませんが、せっかくの学園生活ですから、そのようにしてみるのも一興かと思いまして。ですから殿下も、学園内では私のことはお気になさらず、ご友人方との時間を大切になさってくださいませ」

「え、あ、でも、エスコートくらいは・・・」

「今回は、友人たちで入場する予定ですの。友人たちの婚約者の方々にも了承を得ていますし。ダンスも、せっかくですから他のご令嬢のお相手をして差し上げてくださいませ。学園外では婚約者がいる殿下と踊ることはあまり出来ませんし」

 にこやかな笑みを浮かべながら、ティファはユリシスの申し出を断る。

 ユリシスはなんとも言えない焦燥感を感じた。

 ティファの言っていることは、間違いではない。

 学園内では王族ではなく一人の男として過ごしたいと言ったのは、ユリシス自身だ。

 その際に、王族としての立場も自分の婚約者としての立場も捨てるということかとティファに問われた。

 深く考え過ぎだと一蹴したユリシスに、ティファは分かったと言ったが、それ以来二人の間には微妙な距離ができてしまった。

「あ、今度のそ、側妃マーガレット様の誕生日のパーティーは・・・」

「もちろん伺わせていただきますわ。ドレスは王妃殿下が準備してくださっていますから、エスコートはお願いしますわ」

「そ、そうか。分かった」

 さすがに母親が準備したというドレスを無視して、自分が準備するとはユリシスには言えなかった。

 エスコートを頼まれたことで、焦燥感がほんの少しだけ薄れた。

 ティファはユリシスがに、学園内では婚約者ではなく一臣下として振る舞っているだけだ。

 大丈夫。学園卒業後に自分たちが結婚することは変わらない。

 ユリシスは、そう自分に言い聞かせた。

 そんなユリシスの様子を、ティファは冷ややかな目で見つめる。

(さすがに婚約者だから、学園外では距離は取れないわ。学園でも露骨には避けないようにしないと。ふふっ。殿下、貴方の望み通りにしてあげますわ)
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