どうぞお好きになさってください

みおな

文字の大きさ
72 / 75

72.お分かりではなかったの?

「ごきげんよう、キティ・コンクパール様」

 ティファは、ユリシスと会う前に先にキティが保護されている部屋を訪れた。

 キティ・コンクパール男爵令嬢。
学園の入学式でユリシスに助けられて、それ以来ユリシスのそばによくいた令嬢。

 ティファがユリシスを見限るになった令嬢。

「ティファ・アメトリン様・・・」

「ご無事で良かったですわ」

「どう、して・・・」

 キティの問いかけに、そのどうしてが何を指しているのかとティファは首を傾げた。

 無事を喜んだこと?

 ティファは決して、キティのことを嫌いではないし恨んでもいない。

 確かに、貴族令嬢として足りないところはあるし、婚約者のいる相手に対しての距離感は間違っていると思うが、それとユリシスの愚行は別問題である。

「何を指しての問いかしら?」

「どうして・・・どうしてユリシス様との婚約を解消されたのですか?アメトリン様がいらっしゃらなくなって、ユリシス様は・・・」

 キティは、入学式で助けてもらってからユリシスのことを本気で好きになった。

 優しくて優秀な第一王子殿下。

 噂通りに優しくて。

 でも、そのユリシスのそばには綺麗で凛とした婚約者がいて。

 男爵令嬢である自分が王家に嫁げないことも理解している。

 そして、ユリシスが自分に特別な好意を抱いていないことも。

 その上で、迂闊な言動をするユリシスのそばにいた。

 それは、好きという気持ちであり、男爵家の後継として第一王子という王族をコンクパール男爵家に迎えたいという計算でもあった。

 キティは、ユリシスより現状をよく見ていた。

 ティファが、アメトリン公爵家がユリシスを見切れば、ユリシスが王太子になれないであろうことを。

 可哀想な男爵令嬢を演じれば、ユリシスが英雄気取りで手を差し伸べてくることを。

 だがティファが学園に来なくなって、ユリシスの様子がおかしくなった。

 婚約が解消され、子爵令嬢がユリシスに接近した。

 キティは、自分が決して清廉潔白な人間でないことを分かっている。

 むしろ計算高く、姑息な面があると言っていいだろう。

 だが、それでも。

 ユリシスへの気持ちだけは本物だった。

 だからこそ、ユリシスに近付くズルタナイト子爵令嬢のカトリーヌのことが信用出来なかった。

 あれは、好きな相手を見る目ではない。

 そして、王族としての地位を利用しようとする目でもない。

 あれは、ただの道具を見る目だ。

 何かの目的のために、ユリシスという道具を使おうとする目だ。

「アメトリン様は、ユリシス様がどれだけアメトリン様のことをお好きだったか、お分かりではなかったのですか?」

 
感想 214

あなたにおすすめの小説

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。 初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

なにを言っている。『恥ずかしい』のだろう?

月白ヤトヒコ
恋愛
近頃、娘を見る義息の目がやけに反抗的だとは思っていた。 思春期の男子で、血の繋がらない姉に対する反発や反抗かとも考えていたが……複数の子息達と一緒にとある令嬢に侍っている、との報告を受けた。 その侍っている令息達、の中には娘の婚約者もいるようで――――頭が痛い。 義息と話し合いをせねばと思っていた矢先のことだった。 娘から相談を受けた。例の令嬢に侍る婚約者達に公衆の面前で罵られた、と。よくよく話を聞くと、もう駄目だと思った。 全く、あの婚約者(馬鹿)は一体なにを考えているのだ? 娘と彼との婚約は、彼が傍系王族であるが故に結ばれた……王命で成った婚約。そうでなければ、誰が一人娘を他家へ嫁がせたいと思うものか。 無論、一人娘なのでと断った。すると、傍系とは言え、王族の血を絶やさぬため、我が国の貴族なれば協力せよ、と。半ば強引に、娘を嫁に出すことを約束させられた。 娘の婚約者の家は傍系王族のクセに、ここ数十年段々と斜陽気味のようで……それなりに蓄えのある我が家が、彼の家を立て直せ、と暗に命令されたというワケだ。 なので、娘と彼との婚約は、我が家としては全く歓迎していないのだが―――― どうやら彼の方は、そのことを全く理解していないようだな。 破談にするのに、好都合ではあるが。 そしてわたしは、養子として引き取った義息を呼び出すことにした。 設定はふわっと。 【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】の続きっぽい話。一応、あっちを読んでなくても大丈夫なはず。

初夜に放置された花嫁は、不誠実な男を許さない~不誠実な方とはお別れして、誠実な方と幸せになります~

明衣令央
恋愛
初夜に新郎は元婚約者の元へと走り、放置された侯爵令嬢セシリア。 悲しみよりも屈辱と怒りを覚えた彼女は、その日のうちに父に連絡して実家に帰り、結婚相手に婚姻無効叩きつけた。 セシリアを軽んじた新郎と元婚約者は、社交界の制裁を受けることになる。 追い詰められた元婚約者の男爵家が放った刺客に襲われそうになったセシリアを救ったのは、誠実で不器用な第三騎士団副隊長レオン。 「放置どころか、一晩中、離すつもりはないよ」 初夜から始まったセシリアの物語は、やがて前回とは違う初夜へと辿り着く――。

私がいなくなってから「実は愛していた」なんて、滑稽にもほどがあります。どうぞそのまま、空っぽの部屋で後悔なさってください。

葉山 乃愛
恋愛
「君を愛することはない」と言ったのは、貴方の方でしたよね? 結婚して三年間、一度も寝室を訪れず、愛人との噂を隠そうともしなかった公爵。 離縁状を置いて私が城を去った後、なぜか彼は狂ったように私を探しているらしい。 今さら愛に気づいた? ──ふふ、滑稽ですこと。 私はもう、新しい国で最高の隣人に囲まれて、笑って過ごしているんですから。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話